松本清張_額と歯

題名 額と歯
読み ガクトハ
原題/改題/副題/備考 【重複】〔(株)角川書店=失踪の果て(角川文庫)(1987/11/10)〕
【重複】〔(株)光文社=黒地の絵 カッパ・ノベルス(1962/05/15)〕
本の題名 松本清張全集 37 装飾評伝・短編3【蔵書No0136】
出版社 (株)文藝春秋
本のサイズ A5(普通) 
初版&購入版.年月日 1973/2/20●初版
価格 1200
発表雑誌/発表場所 「週刊朝日」奉仕版
作品発表 年月日 1958年(昭和33年)5月
コードNo 19580500-00000000
書き出し 昭和七年三月五日の朝、三井合名会社理事長団琢磨が、東京日本橋の三井銀行前で、暴力団員の一人に射殺された。折りから上海には日本陸戦隊が上陸し、中国軍と交戦していた。日本が世界の唾を受けながら、シナ大陸の広漠とした泥濘に転倒する序章が、すでに始まっていたわけだが、それとも知らず、軍部に黴のように付着した右翼の妖怪は、勝手に彷徨しはじめていたのだった。早春のひだまりの街路にころがった貴族的な老銀行屋の変死から、警視庁の捜査課は虻のように忙しくなった。その最中のできごとである。一日おいて七日の午前九時ごろ、近ごろできあがった向島寺島町の環状道路を、一人のペンキ職人が歩いていた。彼は多分、近くにある玉の井の娼家からの朝帰りだったかもしれない。倉島広治という名前で三十二歳の男だった。うすら寒い風が吹き、あたりに人通りはまばらだった。前屈みに歩いていたその男の目は、ふと傍の溝に落ちた。
作品分類 小説(短編) 25P×1000=25000
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