題名 | 深層海流 | |
読み | シンソウカイリュウ | |
原題/改題/副題/備考 | ||
本の題名 | 松本清張全集 31 深層海流・現代官僚論■【蔵書No0115】 | |
出版社 | (株)文藝春秋 | |
本のサイズ | A5(普通) | |
初版&購入版.年月日 | 1974/07/05●2版 | |
価格 | 880 | |
発表雑誌/発表場所 | 「文藝春秋」 | |
作品発表 年月日 | 1962年(昭和37年)2月号 | |
コードNo | 19620200-00000000 | |
書き出し | 経営総体協議会副会長坂根重武は、昭和二十八年十月十六日東京発午前九時四十分急行博多行きの特別二等車に乗っていた。列車がホームを離れてからほぼ二時間近く、坂根重武は窓の外を全く向かなかった。後頭部に多少の白髪が混じっているが、うしろから見てその肩が女のようになだらかである。終始、うつむいているのは、手帳にでも何か書いているものらしい。汽車の動揺で書きづらいらしく、姿勢を右に変えたり、左に寄せたりしている。坂根重武の隣の席は空いていた。これは、予約した客がまだ来ないからではなく実は、二人分の席を彼は取っていたのだ。この車輌は指定席だから、満員になっても、そこに闖入する者もなければ、二人分の席を占めた客を非難する者もいない。坂根重武についての贅沢といえば、これだけだった。洋服も、経営総体協議会、つまり経総協の副会長だけであり、幾つかの社長を兼ねる彼としては、わびしいくらいのものだった。二人分の席を取ったというのも、横に他人に座られて、板根重武の車中での作業を妨げられないためである。 | |
作品分類 | 小説(長編) | 211P×1000=211000 |
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