題名 | 弱味 | |
読み | ヨワミ | |
原題/改題/副題/備考 | ||
本の題名 | 青春の彷徨■【蔵書No0066】 | |
出版社 | (株)光文社 | |
本のサイズ | 新書(KAPPANOVELS) | |
初版&購入版.年月日 | 1964/04/20●7版1978/12/20 | |
価格 | 580 | |
発表雑誌/発表場所 | 「オール讀物」 | |
作品発表 年月日 | 1956年(昭和31年)3月号 | |
コードNo | 19560300-00000000 | |
書き出し | 眼をさました。暗い。森閑と静まっている。しとしとと雨の降るような音がしているが、雨降りではなかった。湯槽に溢れた湯が流れる音である。北沢嘉六は枕に頭をつけたまま、じっとその音を聞いた。これだから温泉はいい、普通の旅館ではこの音は聞かれないのだと、温泉宿の醍醐味を味わっていた。眼がさめたついでに、一風呂浴びようかなと思った。真夜中に人気のない温泉にとびこむのも彼の好きなことの一つだ。志奈子は横で眠っている。彼より二十も若いこの女はやはり健康なのであろう、よく眠る。ほんとによく眠る。そういえば、このごろ夜中に二度は眼をさます習慣になったのは年齢のせいかもしれない。どうもいけないと思った。志奈子の若い肉体との差がだんだん開いていくような気がした。足でさわってもわかる。この女のふくらはぎから腿は、脂がのって象牙のようにすべすべとなめらかである。女房のしぼんで肉の落ちた皮膚の感触とはまるで違う。この瑞々しい魅力からはなれられない。 | |
作品分類 | 小説(短編) | 26P×680=17680 |
検索キーワード |