題名 | わるいやつら | |
読み | ワルイヤツラ | |
原題/改題/副題/備考 | ||
本の題名 | 松本清張全集 14 わるいやつら■【蔵書No0092】 | |
出版社 | (株)文藝春秋 | |
本のサイズ | A5(普通) | |
初版&購入版.年月日 | 1971/11/20●初版 | |
価格 | 880 | |
発表雑誌/発表場所 | 「週刊新潮」 | |
作品発表 年月日 | 1960年(昭和35年)1月11日〜1961年(昭和36年)6月5日号 | |
コードNo | 19600111-19610605 | |
書き出し | 二時を過ぎていた。窓から射す光線が昏れかけたように暗い。病院は閑散としている。多少、忙しいのは午前中の二時間であった。此処にいちばん近い内科の診療室に笑い声が起こっているが、医員たちが看護婦とふざけいるのであろう。近ごろ、また余計に疲れた、と戸谷信一は思った。三年前は、この病院も隆盛であった。父親の弟子だった優秀な内科の医長が辞めてから急に悪くなったのだ。一年前に、やはり腕のいい外科医長がやめてから、さらに患者が減った。そのままジリ貧出来ている。赤字が、月々ふえてゆく。病院が閑散でも、経営が赤字でも、院長の戸谷信一はあまり苦にならなかった。赤字の方は、彼には補填の才覚がある。病院は繁盛しなくてもいいと思っている。他の病院に対する競争意識は少しもない。この病院は、亡父の信寛が創った。信一は、それを受けついだだけだが、彼は医者としての情熱をとうに失っていた。院長といっても、熱心に患者を診察するわけではない。経営に専心するかといえば、そうでもない。 | |
作品分類 | 小説(長編) | 470P×1000=470000 |
検索キーワード |