松本清張_彩霧

題名 彩霧
読み サイム
原題/改題/副題/備考  
本の題名 松本清張全集 12 連環・彩霧【蔵書No0089】
出版社 (株)文藝春秋
本のサイズ A5(普通)
初版&購入版.年月日 1972/03/20●初版
価格 880
発表雑誌/発表場所 「オール讀物」
作品発表 年月日 1963年(昭和38年)1月号〜12月号
コードNo 19630100-19631200
書き出し 午後四時半に銀行を出た。なま暖かい早春の土曜日であった。スモッグで朝から太陽が白く濁っている。いつもは六時過ぎまで残るのだが、今日は営業が午前中の上、出納との帳尻もいつもより早く合った。安川信吾は使い古した黒皮の手提鞄を面倒臭そうに持っている。映画館に入り、二時間かかって外に出ると食事を摂った。百円のチキンライス。八時近くになっていた。ふらりと街を歩く。少し重そうな鞄であった。有楽町界隈は、人で混み合っている。彼は銀行マンらしく調髪には気をつけるほうである。二十八歳。ぶらぶらと歩いて洋品店に入った。下着が一通りと、セーターと替ズボンを一つずつ買った。ついでにスーツケースを求めて、買った品をその中に突込み、総計八千円を払った。財布の中は残り少なくなっている。二つの荷物を両手に提げてタクシーに乗り、東京駅前の小さな果物屋に入った。横では稲荷ずしや巻きずしを売っている。汚い店だ。
作品分類 小説(長編) 165P×1000=165000
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