題名 | 筆写 | |
原題 | ヒッシャ | |
原題/改題/副題/備考 | ||
本の題名 | 岸田劉生晩景■【蔵書No0167】 | |
出版社 | (株)新潮社 | |
本のサイズ | A5(普通) | |
初版&購入版.年月日 | 1980/10/20●初版 | |
価格 | 980 | |
発表雑誌/発表場所 | 「新潮」 | |
作品発表 年月日 | 1964年(昭和39年)3月号 | |
コードNo | 19640300-00000000 | |
書き出し | 老人部屋は四畳半で家の奥にあった。雲と松の絵のついた襖の上半分が手垢でうす黒くよごれているのは、安之助がこれに手を当てて身体を支えるからだ。破れているところもある。手垢は柱にも、廊下に出る障子の枠にもついている。安之助は七十二になってもそれほど痩せはせず、大きな体を重そうに動かした。格別、悪いところはないけれど脚が縺れる。便所に行くにも廊下の壁を片手伝いにするので、新築後まもないクリーム色の壁を汚す。黒い指あとは、便所の壁にもついている。しゃがむときも立つときも、前の壁に手をかけないと身体が自由にならないのである。嫁の桂子が安之助の手が当たりそうなところに紙を貼った。建てて間もない家を大事にしているのと、客がトイレを使うときに穢い壁を見られてはみっともないからである。その紙が安之助の指垢である程度までよごれたら取り替えるつもりなのだが、よそから来た客は、眼の前に妙な紙が貼ってあるのでかえって嫌悪感を起こした。 | |
作品分類 | 小説(短編) | 46P×620=28520 |
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