松本清張_地の指

題名 地の指
読み チノユビ
原題/改題/副題/備考  
本の題名 地の指【蔵書No0075】
出版社 (株)角川書店
本のサイズ 新書(KADOKAWANOVELS)
初版&購入版.年月日 1981/11/01●初版
価格 680
発表雑誌/発表場所 「週刊サンケイ」
作品発表 年月日 1962年(昭和37年)1月8日号〜12月31日号
コードNo 19620108-19621231
書き出し 銀座裏のバー「クラウゼン」といううちだった。午後九時半というと、商売はこれからというときだ。ギターを肩にかけた男二人が出てくるのと入れ違いに、社用族らしいのが三,四人、洒落た樫のドアを押した。冬の晩のことで、中にこもった暖かい濁った空気が顔を搏った。眼鏡をかけた男は目の前が真白に曇ってあわてる。女給たちが口々に叫んで集まってくる。客はオーバーを次々に剥がされた。社用族は広くとったボックスに案内された。ここでは馴染みとみえて、ママが他の席から起って来て、「いらっしゃいませ」ママは落着いている。自分でその貫禄を見せているのかもしれない。和服だったが、芸者のお座敷着のような裾模様の着物を着ている。三十二歳の、よく肥えた女だ。なるべく若く見せようとしてか、髪をふんわりと上でふくらましている。社用族はどこのバーでも歓迎される。たちまち五,六人の女たちがここに蝟集した。洋装、着物、とりどりだった。
作品分類 小説(長編) 333P×800=266400
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