松本清張_黒の回廊

題名 黒の回廊
読み クロノカイロウ
原題/改題/副題/備考  
本の題名 黒の回廊【蔵書No0069】
出版社 (株)文藝春秋
本のサイズ A5(普通)
初版&購入版.年月日 1975/09/05●初版
価格 非売品
発表雑誌/発表場所 「松本清張全集」月報
作品発表 年月日 1971年(昭和46年)4月〜1974年(昭和49年)5月
コードNo 19710400-19740500
書き出し 窓の外は窓になっている。隣のビルも昼じゅう天井の蛍光灯が点け放しだった。秋の半ばから太陽の位置がずれて日陰がつづく。来年の春にならないと日射しが戻ってくれない。この王冠観光旅行社では二階の窓に陽が当たってくるのを日向の回帰線と呼んでいた。陽光は四階から順々に降りてくる。日照権が問題になるはるか以前の建物だった。京橋では目抜き通りであった。営業部企画課の谷村が文章を練っていた。窓際でも終日スタンドが必要で、ひろい机の上にはパンフレット類が散らばって、人口の光をうけ、ここだけは花をならべたようである。パンフレットは自社のもあるし、他社のもある。ヨーロッパの地図と、電話帳のような国際線の時刻表も横に開かれていた。片方にはカラー写真が積み上げてある。手もとの灰皿に吸殻が堆積してまわりを灰だらけによごしていた。原稿用紙の最初に小説の題名のように「ローズ・ツア」と大きくかいてある。わきに”RoseTour"−−英字のほうがうまかった。
作品分類 小説(長編) 318P×1000=318000
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