題名B | 捜査圏外の条件 |
読み | ソウサケンガイノジョウケン |
原題/改題/副題/備考 | 【重複】〔(株)文藝春秋=松本清張全集36〕 【重複】〔(株)光文社=青春の彷徨〕 |
本の題名 | 駅路 傑作短編集(六)■【蔵書No0227】 |
出版社 | (株)新潮社 |
本のサイズ | 文庫(新潮文庫) |
初版&購入版.年月日 | 1965/07/30●36版1982/4/30 |
価格 | 400/古本 1円+送料250 |
発表雑誌/発表場所 | 「別冊文藝春秋」59号 |
作品発表 年月日 | 1957年(昭和32年)8月号 |
コードNo | 19570800-000000000 |
書き出し | .......殿 殿とだけ書いて、名前が空白なのは、未だに宛先に迷っているからである。あるいは警視庁の捜査官あての名前になるかもしれぬ。あるいはしかるべき弁護士の名を書き入れるかもしれぬ。もしかすると、このまま空白でおくかもしれない。その決着はこの手紙の最後まで書かないと今の自分には決心がつかない。そのうえ、これが手紙であるか、手記であるか判然としない。手紙とすればはなはだ蕪雑な字句で不遜である。手記とすれば、宛名の部分を設けて個人あての体裁にすぎる。宜なるかな、文章を両股に掛けているのは、もっと別な意味にもなろうかとの仮構である。これを書くにあたって、まず昭和二十五年の四月のことから記さねばならない。今から七年前である。当時、自分は東京××銀行に勤めていた。三十一歳であった。勤務先の銀行は日本でも一流であった。独身だし、環境に不足はなく、生活は面白かった。前途に人並みの希望をもった。自分は阿佐ヶ谷の奥に一軒家を借りて、妹とともに住んだ。今はどうなっているのか知らないが、当時はまだ近所に小さな雑木林が残っていて、無理に嗅げば、武蔵野の匂いがなくはなかった。自分は心たのしく通勤した。 |
作品分類 | 小説(短編) |
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