題名B | 真贋の森 |
原題 | シンガンノモリ |
原題/改題/副題/備考 | 【重複】〔中央公論社=真贋の森〕 【重複】〔(株)文藝春秋=松本清張全集37〕 |
本の題名 | 黒地の絵/傑作短編集(二)■【蔵書No0223】 |
出版社 | (株)新潮社 |
本のサイズ | 文庫(新潮文庫) |
初版&購入版.年月日 | 2010/01/15●59版 |
価格 | 700(本体667円) |
発表雑誌/発表場所 | 「別冊文藝春秋」 |
作品発表 年月日 | 1958年(昭和33年)6月号 |
コードNo | 19580600-00000000 |
書き出し | 醒めかけの意識に雨の音が聴こえていた。目を開けると、部屋の中はうす暗く、二階の窓からは、柿の木の先だけが見えて、伸びた葉が濡れて光っている。背中が汗をかいて、蒲団までが湿っぽい。起きて窓から首を出すと、俺のほした二枚の下着が重そうに雨に打たれている。干竿から雨滴が溜っては落ちていた。階下の煙草屋の女房も、気がつかないのかわざとなのか、とりこんでくれてない。時計を見ると三時を過ぎている。俺はまだはっきりしない頭で座って煙草に火をつけた。今朝、眠ったのが八時だった。詰まらない雑誌に美術記事を書いたのだが、ともかく、部屋代の半分くらいは徹夜でかせいだ。金では得をしたような、労力では損をしたような気持ちで、ぼんやり煙草一本を喫い終わったが、後頭部にはまだ眠気がこびりついていた。風呂へでも入ろうと、手拭いと石鹸をつつんで階下に降りた。濡れている干しものを横目で見ながら、雨の中を外に出た。傘の骨がまた一本はずれてぶらぶらしていた。 |
作品分類 | 小説(中編) |
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