松本清張_二重葉脈

題名 二重葉脈
読み ニジュウヨウミャク
原題/改題/副題/備考  
本の題名 二重葉脈【蔵書No0060】
出版社 (株)光文社
本のサイズ 新書(KAPPANOVELS)
初版&購入版.年月日 1967/11/01●78版1975/03/20
価格 600
発表雑誌/発表場所 「読売新聞」
作品発表 年月日 1966年(昭和41年)6月11日〜1967年(昭和42年)4月17日
コードNo 19660611-19670417
書き出し 春浅い三月十一日の午後一時のことである。東京荻窪駅に近い杉並公会堂では三百人くらいの集会があった。この公会堂はよく総評の大会にも使われることがあるが、今日の会場もかなり異様な緊張に包まれていた。外にはうすら寒いような淡い陽射しがどんよりした雲から落ちている。公会堂の表には、「更生会社イコマ電器第一回関係者人集会会場」と立て看板が出ていた。七,八人ならんで、入ってくる客から通知書をていねいに受け取っていた。債権者宛の通知書が、そのまま入場者の資格証明になっている。社員お顔に生気がない。告別式のように沈痛で行儀がよかった。入場者の服装もまちまちで、会社の重役のような身なりもあれば、町工場の埃のなかからとび出してきたような、ジャンパーの上に色のさめたオーバーをひっかけた人もいた。彼らはいずれも、叩頭する受付の社員には眼もくれず、重い足どりで中に消えた。
作品分類 小説(長編) 378P×830=313740
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【帯】イコマ電器倒産・・・・・・債権者会議では、下請け零細業者の怒りと不安が渦巻いていた。だが、社長の生駒以下会社の幹部は所在をくらましている。偽装倒産の疑いで動きだした捜査陣は、営業担当重役・前岡の水死体発見の報に色めき立つ。続いて経理担当重役・杉村の死体も岡山県のダムの湖底から揚がった。捜査陣の前に姿を現して不敵に笑う生駒・・・・・・その彼も何者かに射殺された・・・・・・。持てる者の歪んだ欲望と明日の生活を失った者の怨恨を底流に描く、松本清張得意の社会推理巨編