「松本清張の蛇足的研究」のTOPページへ

松本清張_小町鼓 絢爛たる流離(第2話)

NO_087

題名 絢爛たる流離 第二話 小町太鼓
読み ケンランタルリュリ ダイ02ワ コマチツヅミ
原題/改題/副題/備考 ●シリーズ名(連作)=絢爛たる流離
●全12話=全集(全12話)
 1.土俗玩具
 
2.小町鼓
 3.
百済の草
 4.
走路
 5.
雨の二階
 6.
夕日の城
 7.

 8.
切符
 9.
代筆
10.
安全率
11.
陰影
12.
消滅
本の題名 松本清張全集 2 眼の壁・絢爛たる流離【蔵書No0021】
出版社 (株)文藝春秋
本のサイズ A5(普通)
初版&購入版.年月日 1971/06/20●初版
価格 800
発表雑誌/発表場所 「婦人公論」
作品発表 年月日 1963年(昭和38年)2月号
コードNo 19630200-00000000
書き出し 午後三時五十三分、列車は、といってもディーゼル車だが、天橋立駅を西に少し向かって離れた。十月二日の、秋のはじめにしては少し涼しすぎる曇り日であった。どうしてこんなこまかい時間に伊瀬忠隆が注意を払ったかというと、列車がホームを動き出したとたんに、彼が腕時計に眼を落としたからである。といって、売店の上に位置した駅の電気時計と、自分のインターナショナルの針と見くらべたわけではない。つまり、退屈だったのだ。彼は小さなあくびをした。京都から乗って、綾部でもいっしょに乗り換えた乗客の半分は、天橋立駅で降りてしまい、車両がにわかに空いてしまったので、退屈感も増し、さらにこれからもっと田舎に行かなければならぬといううらぶれた感じにもなった。
あらすじ感想    「土俗玩具」(第1話)から「小町鼓」(第2話)、と読み進むと、前半と後半の関係で2話で完結と言って良いだろう。

登場人物は「土俗玩具」からの継続になる。
谷尾妙子
淳子夫婦
大蔵伍平
北山先生(北山睦雄
 刑事専門のベテラン弁護士。四十二、三歳。背が低い、小柄な全身に精力が固まったという感じだった。
立石夫人
 谷尾家の隣家の奥さん。谷尾妙子が「謡の会」を誘いに頻繁に出入りする。


妙子が無罪釈放になると、谷尾家は元の姿に戻った。妹の淳子夫婦も追い出され、古い女中も新しく替えられた。
三人の師匠(観世和聖・観世友吉・大蔵伍平)たちで計画された、妙子の雪冤の祝い会は賑やかに開催された。
その席には北山弁護士も招かれていた。
北山弁護士は、他の参列者の前で妙子の指に光るダイヤを見つけ、褒めそやす。
他の参列者の中には、情勢たちも居並ぶ、観世らの師匠三人は礼儀の無い男と嘲りの眼を交わしていた。
師匠三人は、それぞれに妙子に特別の感情を持って不快の感情を表していたのだった。
宴の後も居座り続ける北山弁護士。彼の底意は見え見えだった。

帰ったはずの観世友吉が月明かりの中から顔を出す。
「北山はまだいるでしょう?」「ええ」
友吉は妙子に北山を帰すように催促する。友吉は激情に駆られて妙子の手を取る。
三カラットのダイヤを包み込むことになる。
「痛いわ」と妙子が拒む。「誰か来ていますわ」
ぎょっとして友吉は手を離す。そして、
「伍平にきまってる」
友吉は卑怯者と罵しりながら、
「ここに出てこいと言いたいが、出てくる勇気も無いでしょう。帰りますよ。弁護士も早く帰しなさい」
捨て台詞を残して帰る。
北山が座敷から呼んだ。
「今のは誰ですか。妙なことを言っていましたね?」声は酔ってはいなかった。
事は修羅場寸前で収まる。

その後決定的な事態に至る。
妙子は隣家の立石と言う家に行っていた。それは妙子が「謡の会」を自宅で作るから参加の勧誘だった。
夜の八時頃であった。妙子は、白っぽい着物姿(塩沢色のうすい飛白模様)で訪問し、、三十分くらいで立石さんの家を出た。
十五分くらい経ち、再び妙子は立石さんの家に駆けこんだ。
>「大変です」
>...彼女の顔は硬直し眼が飛び出るように大きくなっていた。荒い呼吸(いき)づかいであった
>「どうしたんですか?」
>「いま、わたくしのうちで北山弁護士が殺されています」
>「えっ」
>隣の奥さんのほうが腰を抜かしたのだった。


徳山璉(トクヤマタマキ):(1903年7月27日 - 1942年1月28日)
 歌手。実在の歌手とは知らなかった。
 
ウィキペディアによる●戦前から戦中に活躍した日本の声楽家(バリトン)・流行歌手・俳優。愛称は「徳さん」。

谷尾家には田舎から出てきたばかりの女中がいた、その女中の話では、「凶行」は全く知らないという。
自室に引き下がり、ラジオで歌謡曲を聴いていた。奥様が部屋の障子を開けたときラジオで徳山璉が歌い始めたときだったと
証言した。
「凶行」は、刃渡り二十センチの匕首。仕掛けがあった。
取り調べを受ける妙子は、それぞれの男関係を告白することになる。妙子の多情ぶりが浮き彫りになる。
大蔵伍平は、当夜、谷尾家に忍び込んでいた。警官の職務尋問に引っ掛かっていたのだ。
大蔵伍平は、いつも和服の着物、白足袋である。当夜はその着物に血液が付着していた。近所のゴミ箱に血まみれの
足袋が捨てられていた。
観世友吉にもアリバイは無かった。妙子のそれぞれの男関係とは、観世和聖、観世友吉、大蔵伍平、
そして裁判後登場した、北山睦雄。
大蔵伍平は否認を続けた。
>「北山弁護士はわたくしの証拠不十分を弁護して無罪にしてくれましたが、それ以来、あの人は執拗に私に付きまといました」
と妙子は自供をはじめた。
北山弁護士は、妙子が砒素を少しずつ夫に飲ませて殺したことを知っていたのだ。
凶器の刃渡り二十センチの匕首の仕掛けとは、竹竿(物干し竿)だった。
酔って寝ている北山を、匕首を括り付けた竹竿で一刺しにしたのだ。
妙子が白っぽい着物を着ていたのも、血痕が付着していないことの証明作りでもあった。
隣家の立石さん家に出入りするようになるのも、「謡の会」を口実に周到に準備したものだった。
>これで、わたくしも、かえって、せいせいしました。
>この上は、夫を砒素で殺した罪も一緒に背負います。やっぱり、夫は善良な人だったと思います。
>ほかの男たちを知って、それがよく分かりました.....
>谷尾妙子は哭(ナ)いた。


谷尾妙子を中心とする憎悪劇。ダイヤの行方は妙子から淳子へ。
最後は丸くまとめられているが、妙子の奔放さ、不誠実、自己中心が際立っている感じがした。
哀れなるは男どもだ。!


2018年10月21日 記
作品分類 小説(短編/連作) 20P×1000=20000
検索キーワード 弁護士・匕首・竹竿・白い着物・隣家の奥さん・謡の会・鼓の紐 
登場人物
谷尾 妙子 谷尾喜右衛門の長女。男の噂が絶えないうちに婿を取る。婿の名は、村田忠夫。妹は淳子。多情な女。。
観世 和聖 謡の師匠。五十歳くらいで、でっぷりとして脂ぎった男。
観世 友吉 仕舞の師匠。三十歳過ぎ、色の白い役者にしてもよいような華奢な身体つき。妙子から激情型と言われる小心者。
大蔵 伍平  鼓を打つ男。やせてはいるが筋骨逞しい。北山弁護士殺害の疑いを掛けられる。妙子の策略にのり殺人現場に乗り込む。
北山 睦雄 刑事専門のベテラン弁護士。四十二、三歳。背が低い、小柄な全身に精力が固まったという感じだった。
立石さん 谷尾家の隣家の奥さん。谷尾妙子が「謡の会」を誘いに頻繁に出入りする。

小町鼓