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松本清張_紅い白描

No_564

題名 紅い白猫
読み アカイハクビョウ
原題/改題/副題/備考  
本の題名 紅い白猫【蔵書No0191】
出版社 (株)角川書店
本のサイズ 文庫(角川文庫)
初版&購入版.年月日 1989/12/10●12版1993/07/20
価格 505+税(3%)/古本 260(税5%込み) 
発表雑誌/発表場所 「マドモアゼル」
作品発表 年月日 1961年(昭和36年)7月号〜1962年(昭和37年)12月号
コードNo 19610700-19621200
書き出し 原野葉子は、その年の春、××美術大学図案科を卒業した。図案科は服飾デザインと商業美術とに分かれている。葉子は商業美術のほうだった。卒業制作には、観光と、機械製品と、化粧品をテーマにした三つのポスターを描いたが、どれも評判が良く、主任の矢田部教授から賞められた。「原野君は、デパートに入るかね?それとも、独立したデザイナーになるかね?」矢田部教授は卒業後の方針を訊いた。原野葉子は、将来、自分で独立してやってみたかった。しかし、学校だけの経験ではやはり心許ない。彼女は、デパートよりも、自家経営を遣っているデザイナーのところにしばらく働きたかった。ある程度、そこで経験を積んでおきたいのだ。デザイナーの世界では、ただ絵が立派だけでは通らない。スポンサーとの間の談合や、取引の仕方も見習っておかねばならなかった。
あらすじ感想 美術大学を卒業した原野葉子は、葛山産業美術研究所へ入る。

将来独立したデザイナーになることを希望していた葉子が選んだのは、

新進気鋭の商業デザイナーである葛山正太郎の葛山産業美術研究所であった。

入所後三ヵ月も過ぎた頃葛山から出張を命ぜられる。

出張先は名古屋の中部交通株式会社。中部交通株式会社の観光ポスター依頼である。

観光課宣伝主任の中山喜一に、長良川、下呂温泉のスケッチに行くため、犬山の旅館へ案内される。

>「あなたは一人で来たんでしょうね?」と妙なところで念を押した。
>「はい、一人ですわ」


念の入れ方も妙であるが、葉子の返事も「一人ですわ」の「わ」も時代を感じさせる。

スケッチの為の外出先で雨に降られ、建築家の西原周一に出会う。

西原周一とは初対面であるが、妹の名をデザイナーとして知っていた。

雨の中、二人で旅館まで帰ると、そこに中山喜一が現れる。

二人の中を疑われた葉子は東京に帰る。東京に帰ったことを怒らない葛山正太郎。

あるとき

アネガワヒロシに出会う。この出会いには、不自然さを感じる。

私は、直感的に葉子がヒロシを目撃した場面で葛山正太郎の秘密を嗅ぎ取ることが出来た。

盗作がテーマである。

この文庫本の解説(権田萬治氏)でも紹介された「天才画の女」を読んだことがあるからなのか、

その共通点を意識した。

画に特殊な才能を持つ知恵遅れのヒロシ。

ヒロシとの出会い以後は、西原兄妹と葉子の謎解きが中心となるが

葛山正太郎の秘密に寄生する中山 喜一。そして、上田 吾一。

葉子の好奇心と探求心は、葛山正太郎の秘密に突き当たる。

葛山の「僕の今までの仕事は全部ニセモノでした」の衝撃の告白ですべてが終わる。

しかし

>ヒロシはほんとうは誰の子であったのか。これ以上、それを詮索する気持ちは無くなっていた。

は、気になる。

そして、もう一つのテーマは純粋美術と商業美術である。


2005年07月11日 記
作品分類 小説(長編) 335×320=107200
検索キーワード 葛山産業美術研究所・観光ポスター・ヒロシ・養護施設・盗作・デザイナー・精薄児童・純粋美術・商業美術
【カバー】美大を卒業したばかりの葉子は、憧れの葛山デザイン研究所に入所する。尊敬する鬼才、葛山の下で精一杯、勉強したかったからだ。が、不可解な葛山の言動から、彼の作品のオリジナリティに疑問をもつ。真実を知りたいという熱い思いにかられ、葛山の周辺を次々に追及する葉子の前にあらわれた意外な真相とは−−−。常に斬新でなければならない一流デザイナーの苦悩を、華やかな業界を背景に描いた傑作サスペンスロマン!
登場人物
原野 葉子 ××美術大学図案科を卒業して、葛山産業美術研究所に入所。主人公
矢田部教授 ××美術大学図案科の主任教授
葛山 正太郎 36歳。葛山産業美術研究所の社長。商業デザイナー
西原 周一 建築家。後に葉子の恋人になる。そして結婚
西原 さつき 西原周一の妹。デザイナー
中山 喜一 中部交通株式会社観光課宣伝主任
アネガワ ヒロシ 13歳。画に特殊な才能を持つ知恵遅れの少年。葛山 正太郎の画の源泉。姉川浩
上田 吾一 平和学園当時のヒロシの担任。ヒロシをいじめる。
木村 30年配、葛山の助手。葛山と瓜二つの画を描く。
佐久間 26歳、葛山産業美術研究所に入いって4年になる。葉子に思いを寄せる。
上田 春江 十八,九歳。葛山産業美術研究所の雑用係。研究所では葉子以外のタダ一人の女性

紅い白描