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松本清張_告訴せず(改題)

(原題=黒の挨拶(第一話))

No_0009

題名 告訴せず
読み コクソセズ
原題/改題/副題/備考 (原題=黒の挨拶(第一話))
●「週刊朝日」に「黒の挨拶」〈第一話〉として、昭和48年1月12日号より11月30日号まで43回に
 わたり連載された作品に、作者が加筆
本の題名 告訴せず【蔵書No0093】 映画
出版社 (株)光文社
本のサイズ 新書(KAPPANOVELS)
初版&購入版.年月日 1974/02/15●51版1975/11/01
価格 600
発表雑誌/発表場所 「週刊朝日」
作品発表 年月日 1973年(昭和48年)1月12日号〜1973年(昭和48年)11月30日号
コードNo 19730112-19731130
書き出し 容貌の程度も平均以下で、風采も上がらない四十半ばの男は、群衆の中ではただの夾雑物でしかない。その人間が歩いていても立ちどまっていても、近くの人々に眼にはその動作だけがぼんやりと眼の端に動いているだけで、顔や服装の特徴には何の印象も残らない。雑踏の中で立ちどまられると、通行人は行く手が塞がれて除けて通らなければならないので、その男の顔を瞬間ひと睨みはするが、それでいて、あとではさっぱり思い出せないといったふうなのだ。何かの犯罪が起こって目撃者から人相の証言を取るとき、その申し立てがきまってまちまちになるという警察泣かせの顔だった。それだからといって、そういう種類の顔がかならずしも平凡というのではない。よく見ると特徴はあるのだ。印象に残らないのは、人々が印象にとどめるほどには注目しないということなのだろう。そもそも注意を払わないというのは、その人間の容貌や風采のぜんたいが、ありふれ過ぎていて魅力を感じさせないことに帰するのだが。木谷省吾がそういう人間の一人であった。
あらすじ感想 選挙資金を持ち逃げする男の話である。

容貌の程度も平均以下で、風采も上がらない四十半ばの男、木谷省吾は、

彼の人生で最初で最後の事件を起こす。

持ち逃げする金は選挙資金といっても表に出せる金ではない。

清張ならでなの目の付け所である。

小豆相場で一儲けする木谷は、潜伏先の旅館で懇ろになったお篠と新生活の

夢を見るようになる。

しかし、彼の身辺には選挙資金を持ち逃げされた大井芳太の手が迫っている。

小豆相場の仲買店「平仙物産株式会社」の社員小柳、そこで知り合った大場老人、その息子。

一見、大井芳太とは全く関係ないところから木谷は追いつめられてゆいく。

それは、お篠の裏切りで決定的になる。

選挙資金の持ち逃げという一般人には、痛快な出来事、言ってみれば「ざま〜みろ」的な

気分で木谷を応援し、その出世(儲け話)に溜飲を下げるが、清張はそれで終わらせない。

甘くないのである。

木谷の破滅が結末である。破滅のキーワードは、『間歇性記憶喪失症』である。

清張創造の「間歇性記憶喪失症」は、こんな病気もあるのかと思わせる。

長編である。登場人物も多彩で確か映画化されたのでは?


2002年08月04日 記
作品分類 小説(長編) 302P×870=262740
検索キーワード 選挙資金・小豆相場・旅館・ホテル・間歇性記憶喪失症・代議士
登場人物
木谷 省吾 主人公。ありふれすぎていて魅力を感じさせない男。選挙資金を持ち逃げする。
お篠 木谷の愛人。木谷を裏切る
小柳 仲買店「平仙物産株式会社」の社員。木谷の担当。やはり木谷を裏切る
大井 芳太 木谷に選挙資金を持ち逃げされる保守党代議士
大場 平太郎 大場老人.として登場。「仲買店」で木谷と知り合う。保守党の旧い院外団的な残党
大場 平助 大場平太郎の息子。お篠と組んで木谷の金をせしめる。

告訴せず