松本清張_湖底の光芒(改題)

(原題=石路)

題名 湖底の光芒
読み コテイノコウボウ
原題/改題/副題/備考 (原題=石路)
本の題名 湖底の光芒【蔵書No0028】
出版社 (株)講談社
本のサイズ 新書(KODANSHANOVELS)
初版&購入版.年月日 1983/01/08●初版
価格 660
発表雑誌/発表場所 「小説現代」
作品発表 年月日 1963年(昭和38年)2月号〜1964年(昭和39年)5月号
コードNo 19630200-19640500
書き出し ケーアイ光学の債権者会議は午後三時からだ。三月九日は土曜日である。遠沢加須子の乗った車が池袋の繁華な通り抜けたのは三時一五分前だった。交通渋滞で思わぬ遅れとなった。「運転手さん、志村まであと十五分で行けるかしら?」「さあ、急いで行ってぎりぎりでしょうね」タクシーの運転手も中仙道に出てほっとしたように云う。もう少し早く出ればよかったと加須子は思った。開会には遅れるかもしれない。成り行きに任せるより仕方がない。時間に遅れたように、これから先の債権者会議の成り行きも半ば諦めている。絶望的な気持ちになってはいけないとは思いながらも、相手のケーアイ光学の倒産状態を聞くにつれて、中間程度の下請けは回収を諦めなければならないようだ。怒りがこみ上げてくるが、腹を立てるだけでは仕方がなかった。これまでケーアイ側の無理はずいぶん聞いたし、そのためにじゅ業員の徹夜もつづいた。夜勤料の支払いが一ヵ月分の賃金の八割ぐらいに上がったことも珍しくない。そのやり繰りに苦労したが、それでもあとでケーアイからまとめて金が貰えることを思えばこそだった。
作品分類 小説(長編) 250P×760=190000
検索キーワード 女社長・中部光学・レンズ・計画倒産・詐欺・諏訪湖・心中系列会社・夫の妹
【カバー】遠沢加須子は、中部光学という夫の遺したレンズ製造会社を長野県の諏訪で経営している。親会社の倒産に苦しんでいる時、手をさしのべて来たのは、諏訪の大会社ハイランド光学だった。親会社の横暴に泣く下請け会社の悲哀と、加須子にのびる欲望の影、そして加須子の若い妹の情熱が一つの悲劇を呼ぶ・・・・・・諏訪湖に沈む謎を探る。