『松本清張事件簿No01』
「松本清張と三島由紀夫」
「三島由紀夫」とはなにものだったのか
(新潮文庫) (文庫)
橋本 治 (著)
松本清張と三島由紀夫の確執が伝えられているがその実態は?
一般的には、1963年中央公論社が文学全集を刊行する際、松本清張の作品を
全集に集録することに三島由紀夫が、反対したと伝えられている。
>編集委員の三島由紀夫が、「清張には文体がない。文学じゃない」と収録に強く反対。容認派の
>川端康成、谷崎潤一郎委員を押し切った。
でも、それは編集委員(文学全集)の選考にあたって、清張は推理作家であるということで、
編集委員への清張の参加を拒否した。とも言われる。
たったこれだけのことでも話しは違う。
このことは、どうやら前記(全集に集録)が正しいようだ。
【「三島由紀夫」とはなにものだったのか
】橋本 治 (著)で、中央公論の元社長の話しとして
語られている。
※気になるのは、社長だった人の話しとされていて、実名がない。名前を伏せる意味があるのだろうか?
「文学全集」の刊行時期から容易に確定できると思うのだが。
【「三島由紀夫」とはなにものだったのか
】橋本 治 (著)の橋本氏は
ある作家が意味不明な理由で別の作家を嫌う時、その動機は嫉妬である確率が非常に高い。
として三島由紀夫「嫉妬説」を上げている。
インターネット上で見た○○氏(apocalypse666surviva)は
>あたしの感想では、清張は三島を『うらやみ、妬み、憎しみ、呪っ』たんだろう。
>あと、数十年もしないうちに松本清張の作品は消えるだろう、現在も売れていないし、
>しかし、三島の作品は残り続けるだろう。
>というのは、三島は現実を扱って文学に昇華させた。
>しかし、清張のは陰謀史観に見るように、たんなるこじ付け、スキャンダルに過ぎなかった。
>松本清張の社会は推理で真っ先に消えるのが『陰謀史観』だろう、ホントにこれは愚劣だったと
>あたしは今感じている。
>例えば、1952年の“もく星号墜落事件”をテーマに占領軍内部の隠された過去が暴かれていく
>「風の息」(『赤旗』連載)。
とされている。が、
この前段が、【「三島由紀夫」とはなにものだったのか
】橋本 治 (著)の引用で
橋本氏は、三島由紀夫「嫉妬説」なのだが、○○氏は
>あたしの感想では、清張は三島を『うらやみ、妬み、憎しみ、呪っ』たんだろう。
と清張「うらやみ、妬み、憎しみ、呪っ」説である。
その挙げ句が、
松本清張の社会は推理で真っ先に消えるのが『陰謀史観』だろう、ホントにこれは愚劣だったと
あたしは今感じている。
であるから、○○氏(apocalypse666surviva)の特殊な立場の特殊な感想のようだ。
※原文のママ(社会は=社会派?か)
○○氏に
>あと、数十年もしないうちに松本清張の作品は消えるだろう、現在も売れていないし、
>しかし、三島の作品は残り続けるだろう。(2007年2月11日)
の検証を求めたい。
清張は三島由紀夫をどう見ていたのか?であるが
因みにある有名編集者が、三島の自決後の松本清張の印象を以下のように書いています。
「『太陽と鉄』を書き、『豊饒の海』を書いて死んだ。ここまできたら、もう書けなかったろう」
と宿敵三島にはまったく容赦しなかった。
しかし、三島の才能が死に瀕していたとは到底思えない、怖ろしい吸引力を潜ませた
文章である。
私が「そんなはずはないでしょう。やはり三島は美の観念に殉じたのではありませんか?」と言うと、
顔色を変え、めずらしく激昂した。
地団駄を踏むみたいなその子どもっぽい激昂ぶりは、憎むべき強烈な仮想敵を失って
しまった者の、はぐらかされた空しさとも受けとれたのである。
これも有名編集者?と仮名である。
ここまで見てくると
なぜか発言者が匿名であることに気が付く。伝聞なのである。
そして
清張が三島由紀夫を.....
三島由紀夫が清張を.....
が錯綜している。(両方からの見方がない。)
橋本氏は「松本清張が入っているからこっちを買おう」と言う立場を鮮明にして
「松本清張を拒絶する三島由紀夫」である
そして「三島由紀夫も松本清張を嫉妬したのだろう」と進んでいるのである。
○○氏(apocalypse666surviva)は
清張は三島を『うらやみ、妬み、憎しみ、呪っ』たんだろう。
である。その立場は
>松本清張の社会は推理で真っ先に消えるのが『陰謀史観』だろう、ホントにこれは愚劣だったと
>あたしは今感じている。
である。
では、当人たちはどうだったのか?
こんな事実もある。
三島由紀夫や中島河太郎と共に、「江戸川乱歩全集」(講談社・全15巻・1969〜70年)の編集委員を
務めている。
また、
清張は、第19回江戸川乱歩賞の選考委員を務めている。
(選考委員:
島田一男、多岐川恭、角田喜久雄、中島河太郎、南条範夫、松本清張
)
私は
三島の「清張には文体がない。文学じゃない」
より
清張の「『太陽と鉄』を書き、『豊饒の海』を書いて死んだ。ここまできたら、もう書けなかったろう」
が、彼(三島)の死に様から説得力を感じる。
そして
燕雀 ( えんじゃく ) いずくんぞ 鴻鵠 (
こうこく ) の志を知らんや
なのでしょう...
2010年4月20日 記
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