研究室_蛇足的研究

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2025年08月21日


清張作品の書き出し300文字前後で独善的研究!




研究作品 No_171
老公

(月刊文藝春秋での発表時には、七回・八回(1990年12月号〜1991年1月号)
※単行本【草の径】では第三話として集録・全集では五話として集録

都内の各地域の中小の古書店が連合して神田の古書会館で展示即売会の「古書市」を催しているが、開催日三週間前くらいにその目録が送られてくる。●蔵書【松も清張全集 66 老公 短編6】((株)文藝春秋●「月刊文藝春秋」1990年(平成02年)12月号〜1991年(平成3年)1月号
〔月刊 文藝春秋〕
1990年(平成02年)12月号〜1991年(平成03年)1月号


都内の各地域の中小の古書店が連合して神田の古書会館で展示即売会の「古書市」を催しているが、開催日三週間前くらいにその目録が送られてくる。わたしはある新聞社の文化部を定年退職してから三年になるが、たまに雑誌に雑文を書いている。去年の三月だった。それは目黒のほうの古書店連合の展示会目録だったが、四十ページばかりの小冊子にぎっしりとつまった活字の中に「西園寺公爵警備沿革史 静岡県警察部 1万円」というのが目にとまった。わたしの胸は針金で突かれたように動悸がうった。静岡県警察部編の西園寺公邸警備といえば興津の座漁荘にきまっている。非売品にちがいない。というのは、戦前に出た司法研修所資料とか警察研修所資料といったものはたいてい検事か警察官の執筆で、検事だと事例を引いての犯罪の分析とか、ときには外国の犯罪研究の翻訳が載ったりする。警察官だと著名犯罪を引用しての捜査の検討とか反省といったものが書かれている。表紙にはどれも「部外秘」の囲いが付いているが、面白いものもあれば、つまらないものもある。しかし、この『西園寺公爵警備沿革史』は必ず充実した内容にちがいないと思った。
シリーズ作品「草の径」は、清張最晩年の作品です。
発表時から単行本に収録されるまでに紆余曲折があったように見受けられる。
発表は、「月刊 文藝春秋」で、1990年(平成2年)1月号から始まっている。
1990年(平成2年)1月号=「削除の復元」
1990年(平成2年)4月号=「ネッカー川の影」
1990年(平成2年)5月号=「死者の網膜犯人像」(原題:死者の眼の犯人像)
1990年(平成2年)6月号=「「隠り人」日記抄」
1990年(平成2年)8月号=「モーツアルトの伯楽」
1990年(平成2年)10月号=「呪術の渦巻き文様」(原題:無限の渦巻き文様)
1990年(平成2年)12月号〜1991年(平成3年)1月号=「老公」
1991年(平成3年)2月号=「夜が怖い」
何れも短編であるが、以上の通り順次発表されている。(必ずしも毎月発表された訳では無いようだ)

●シリーズ作品【草の径】として単行本で出版
1991年に文藝春秋社から単行本「草の径」が、出版されている。(私は3版を蔵書/初版は1991年)
  【草の径】第一話『ネッカー川の影』
【草の径】第二話『死者の網膜犯人像』
【草の径】第三話『「隠り人」日記抄』
【草の径】第四話『モーツアルトの伯楽』
【草の径】第五話『呪術の渦巻き文様」
【草の径】第六話『老公』
【草の径】第七話『夜が怕い』

※【草の径】での集録順
 「削除の復元」は【草の径】には、集録されていない

●全集の第66巻(1996年(平成8年)3月30日/初版)
※「松本清張全集 66 老公 短篇6」では、「削除の復元」は、 シリーズ「草の径」ではなく単独で収録
全集66巻短編6では、「草の径」 収録順番がかなり違っている。
それぞれ出版事情があるのだろうが、「老公」が、草の径の第一話のように編集されていて
「削除の復元」が、単独の短編として編集されている。奇妙に感じられる。

収録内容は
 一.【草の径】(siri-zu03)
  1.老公(077__02)
  2.モーツアルトの伯楽(075__02)
  3.死者の網膜犯人像(073__02)
  4.ネッカー川の影(072__02)
  5.「隠り人」日記抄(074__02)
  6.呪術の渦巻文様(076__02)
  7.夜が怕い(078__03)

 二.「河西電気出張所」(613__03)
 三.「山峡の湯村」(046__02)
 四.「夏島」(606___02)
 五.「式場の微笑」(113__02)
 六.「骨壺の風景」(058__02)
 七.「不運な名前」(614__02)
 八.「疑惑」(004__02)
 九.「断崖」(609__02)
 十.「思託と元開」(704)
十一.「信号」(607__02)
十二.「老十九年の推歩」(608__02)
十三.「泥炭地」(677__02)
十四.「削除の復元(071)


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キーワードで「古書」を考えて見た。
書き出しから拾ってみると「二冊の同じ本」・「相模国愛甲郡中津村」・「遺墨」と、この「老公」が抽出できた。
西園寺公の話は「史観・幸相論」にも書かれているようだ。

どうやら、「西園寺公爵」の話しらしい。
「古書」の話は、清張の得意分野と言える。単純に古書の話しと言うよりは、「西園寺公爵」の話に展開していくのだろうと予測した。
新聞社の「文化部」を退職した男が、古書を探している。雑文を書いているらしいので、その資料探しかもしれない。
話しは静かにスタートする。


出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
静岡県清水区興津清見寺町に復元された興津坐漁荘
坐漁荘(ざぎょそう)は、元老であった公爵・西園寺公望が1920年(大正9年)に静岡県庵原郡興津町
(現在の静岡県静岡市清水区)に建てた別邸。