研究室_蛇足的研究
2025年08月21日 |
清張作品の書き出し300文字前後で独善的研究!
研究作品 No_170 【呪術の渦巻き文様】 (原題:無限の渦巻き文様) (月刊文藝春秋での発表時には、六回(1990年10月号) ※単行本【草の径】では第五話として集録・全集では六話として集録 〔月刊 文藝春秋〕 1990年(平成02年)10月号 |
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ダブリン行きの搭乗口はヒースロー空港の西の端ゲートで、そこは地下道に入っていくように狭くて、じめじめした感じである。世界各国の主要都市と直結しているこの空港のゲートではいかにも冷遇されて隅っこに追いやられた感じで、待合室の天井も低く、漆喰の壁はうすよごれてコンクリート床にならんだ長椅子は公園のベンチのように硬かった。掛けている人々も華やかな旅支度の男女は一人もいなく、まるで出稼ぎ人の里帰りといった地味な服装だった。ジャンボ機が頻繁に離陸するのを背景に、ダブリン行きボーイング737の百人乗りが、ゲートの出口の百五十メートル先にあらわれた秋の蜻蛉のように小さな翼を縮めていた。田代はさきほどから煙草を喫みたかったが、どこにも置かれている筒形の灰皿は見当たらなかった。そういえば田舎空港の待合室と変わらないここでは煙一筋も流れていなかった。何列かの長椅子や窓ぎわに窮屈そうに掛けている男たちは新聞をひろげたり低声で陰気に話し合ったりしているが、煙草をくわえているすがたはなかった。 |
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シリーズ作品「草の径」は、清張最晩年の作品です。 発表時から単行本に収録されるまでに紆余曲折があったように見受けられる。 発表は、「月刊 文藝春秋」で、1990年(平成2年)1月号から始まっている。 1990年(平成2年)1月号=「削除の復元」 1990年(平成2年)4月号=「ネッカー川の影」 1990年(平成2年)5月号=「死者の網膜犯人像」(原題:死者の眼の犯人像) 1990年(平成2年)6月号=「「隠り人」日記抄」 1990年(平成2年)8月号=「モーツアルトの伯楽」 1990年(平成2年)10月号=「呪術の渦巻き文様」(原題:無限の渦巻き文様) 1990年(平成2年)12月号~1991年(平成3年)1月号=「老公」 1991年(平成3年)2月号=「夜が怖い」 何れも短編であるが、以上の通り順次発表されている。(必ずしも毎月発表された訳では無いようだ) ●シリーズ作品【草の径】として単行本で出版 1991年に文藝春秋社から単行本「草の径」が、出版されている。(私は3版を蔵書/初版は1991年)
●全集の第66巻(1996年(平成8年)3月30日/初版) ※「松本清張全集 66 老公 短篇6」では、「削除の復元」は、 シリーズ「草の径」ではなく単独で収録 全集66巻短編6では、「草の径」 収録順番がかなり違っている。 それぞれ出版事情があるのだろうが、「老公」が、草の径の第一話のように編集されていて 「削除の復元」が、単独の短編として編集されている。奇妙に感じられる。 収録内容は 一.【草の径】(siri-zu03) 1.老公(077__02) 2.モーツアルトの伯楽(075__02) 3.死者の網膜犯人像(073__02) 4.ネッカー川の影(072__02) 5.「隠り人」日記抄(074__02) 6.呪術の渦巻文様(076__02) 7.夜が怕い(078__03) 二.「河西電気出張所」(613__03) 三.「山峡の湯村」(046__02) 四.「夏島」(606___02) 五.「式場の微笑」(113__02) 六.「骨壺の風景」(058__02) 七.「不運な名前」(614__02) 八.「疑惑」(004__02) 九.「断崖」(609__02) 十.「思託と元開」(704) 十一.「信号」(607__02) 十二.「老十九年の推歩」(608__02) 十三.「泥炭地」(677__02) 十四.「削除の復元(071) ------------------------------------------ 「ネッカー川の影」・「モーツアルトの伯楽」についでの海外編 ダブリンは、 ![]() ダブリン:Baile Átha Cliath ダブリン(愛: Baile Átha Cliath、英: Dublin)は、アイルランド島東部に位置する、アイルランドの首都。 レンスター地方のダブリン県に属している。リフィー川河口、東海岸の湾に位置し、その南北に町が広がる。 南にはウィックロー山地の一部であるダブリン山地に接している。2016年の人口は117万3179人だった。 田代という男が、ダブリン行きの航空機を待っている。 空港はヒースロー空港だが、ダブリン行きの搭乗口は片隅に追いやられているらしい。 ヒースロー空港は、 ロンドン・ヒースロー空港(ロンドン・ヒースローくうこう、英語: Heathrow Airport)は、 イギリスの首都ロンドンの西部にあるイギリス最大の空港。 国際空港評議会の集計による国際線利用者数は2019年が約7604万人で、ドバイ国際空港に次ぎ世界第2位。 2013年まで世界一の空港だった[6]。所有・運営は、民間会社のヒースロー・エアポート・ホールディングスである。 空港コードはLHR (IATA) /EGLL (ICAO) 。 ブリティッシュ・エアウェイズ、ヴァージン・アトランティック航空のハブ空港になっている。 取材旅行の結果を作品にまとめたものだろうから、設定はその時立ち寄った空港だろう。 よくある空港での待合室の風景。 確かに、大きな空港でも、地方への路線は空港の端っこに追いやられている。 |