研究室_蛇足的研究

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2021年12月21日


清張作品の書き出し300文字前後で独善的研究!




研究作品 No_123
再春

鳥見可寿子はペンネームで、本名は和子である。短大にいたころ校内の同人雑誌に出していた小品の筆名をそのまま使ったのだった。二年前、彼女が中央の文学雑誌に出した小説が新人賞となり、つづいてその年の或る文学賞となった。その文学賞は相当な権威があったので、鳥見可寿子の名は土地で一躍有名となった。●蔵書【隠花の飾り】(株)新潮社:「小説新潮」1979年(昭和54年)2月号
〔小説新潮〕
1979年(昭和54年)2月号



鳥見可寿子はペンネームで、本名は和子である。短大にいたころ校内の同人雑誌に出していた小品の筆名をそのまま使ったのだった。二年前、彼女が中央の文学雑誌に出した小説が新人賞となり、つづいてその年の或る文学賞となった。その文学賞は相当な権威があったので、鳥見可寿子の名は土地で一躍有名となった。そこは中国地方第一の都市だった。和子はこの市に生まれ、やはりこの市に生まれた鳥見敏雄と十年前に結婚した。夫は東京に本社がある広告代理店につとめていた。子供がないので、三年前から時間をみては小説を書いていたが、それはじぶんだけの愉しみであり、夫に言わせると「女房の玩具」だったし、土地の文学グループにすすんで入ることもなかった。短大のときに歴史学の教授が市民のあいだにつくった郷土史会に和子は顔を出していたが、北原茂一郎というその教授が定年退職したのちも彼女はときどき北原家に出入りして郷土史の話など聞いていた。
鳥見可寿子(本名=和子)は、同人誌に出していた作品を中央の文学誌に出し、新人賞となりつづいて文学賞を受賞した。
中国地方第一の都市では一躍有名となった。和子は、広告代理店の夫と二人暮らしで、小説は和子の自分だけの楽しみだった。
夫に言わせると「女房の玩具」だった。
地元の文学仲間のグループにも属せず。短大時代の縁で、郷土史会に顔を出すのが唯一の社会参加だと言えた。
そんな和子の周辺が一変することになるのは想像に難くない。

「鳥見可寿子の名は土地で一躍有名となった。そこは中国地方第一の都市だった。」
は、多分広島市だろう。

書き出しだけでおおよその外郭がつかめる。
「再春」と言う意味深のタイトルが物語としてどう展開するのか興味がある。



シリーズ作品【隠花の飾り】(全11話)の第10話の作品である。
実は、この作品は、【■徹底検証●「春の血」と「再春」再登録●】で取り上げたことがある。
しかし、具体的に紹介作品としては、まだ取り上げてはいなかった。(「春の血」は、後に取り上げた)
今回蛇足的研究とともに,紹介作品として取り上げることにした。