研究室_蛇足的研究

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2020年3月21日


清張作品の書き出し300文字前後で独善的研究!


  研究作品 No_102

詩と電話

陰鬱な長雨が終わると、急に強い光線の、眩しい初夏になった。調査部の梅木欽一は部長に呼ばれて、今度の異動で通信部に移らないかと云われた。●蔵書【失踪 松本清張初文庫化作品集@】:オール讀物1956年(昭和31年)8月号


詩と電話
〔オール讀物〕
1956年(昭和31年)8月号


陰鬱な長雨が終わると、急に強い光線の、眩しい初夏になった。
調査部の梅木欽一は部長に呼ばれて、今度の異動で通信部に移らないかと云われた。
「通信部から君を返して貰い度といって来ている。
身体もよくなったし、久しぶりに出ていってはどうだね」梅木は一年前に胸を悪くして長く休んでいたが、
癒くなってから出社して来ても、病後というので暇な部署で遊ばしてもらっていた。
「H通信局の村田君がよそに行くので、あすこが空くのだ。どうだ、一年くらい田舎暮らしもいいぜ」と、
にやにやした。梅木はそれもいいな、と思ったのでその場で承知した。家族の無い気軽さだった。
彼は調査室に戻って、H市というのはどんな所かと思って、本を調べてみた。
(H市。人口三万八千。日本三大急流の一つK川の中流の北岸に発達した旧城下町。
市の西端の城址は五万石須貝侯の居城であった。市の産業は林業と果実。また材木の集散地。
この附近から乗って下流八キロに亘る舟行はK川下りとして有名。
夏の鮎釣りと秋の紅葉時の渓谷美は独特である。人情醇朴、山間の城下町の気品と情趣が残っている)
調査部の梅木欽一は、地方の通信部への転勤を打診される。
部署名から、新聞社のような会社らしい。
病後の梅木は、調査部という閑職で遊ばせて貰っている感じだった。だから、地方への転勤も通信局という第一線でもあり、
望まれた転勤だ。「一年くらいの田舎暮らしもいいぜ」の誘いを承知した。梅木は独り者だった。
以下に転勤先の描写。簡潔な文章で、その場所は目に見えるようだ。
例によって蛇足だが、場所を特定してみよう。
三大急流とは
富士川(長野県・山梨県・静岡県)
球磨川(熊本県)
最上川(山形県)
で、H市、K川なら、人吉市。球磨川。だが五万石須貝候の居城がよくわからない。
無難な書き出し、何も起こらない。
通信局勤務になる、主人公であろう、「梅木」と、梅木の勤務場所の紹介.....【眼の壁】でも通信局が出てきたな...