研究室_蛇足的研究

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2019年5月21日

清張作品の書き出し300文字前後で独善的研究!


研究作品 No_096

 絢爛たる流離:第十一話陰影


研究発表=No 096

絢爛たる流離陰影
 〔婦人公論:1963年(昭和38年)11月号〕

男と女が別れる場合、愛情の冷めた方が何をきっかけにして起きるかである。それは、外的条件に影響されることも多い。その条件も著しく外に目立つ場合と、当事者同士の間だけにしか見えないことがある。 【絢爛たる流離:陰影】蔵書:松本清張全集 2 眼の壁・絢爛たる流離:婦人公論 1963年(昭和38年)11月号

男と女が別れる場合、愛情の冷めた方が何をきっかけにして起きるかである。それは、外的条件に影響されることも多い。その条件も著しく外に目立つ場合と、当事者同士の間だけにしか見えないことがある。加久隆平と津神佐保子の別れ方は、そのどちらの場合であろうか、二人だけの間で分かっている点ではあとの場合ともいえるし、条件の大きさからいえば前の場合ともいえる。「コスタリカ」のバーテンの君島二郎が殺されてから、加久隆平は津神佐保子に逢いにゆく積極性を失っていた。佐保子からあまり誘いがかかってこなかった。バーテンの死が二人の間の大きな隙間になったのは事実だった。しかし、この原因はほかの誰も知っていない。あれから二ヵ月が経った。正確には、君島二郎殺しの捜査本部が解散したと新聞に出てから二週間目だった。久しぶりに加久隆平は会社で津神佐保子からの電話を受けた。

前作の「安全率」(第十話)から、題名が少し抽象的になった。

登場人物は前作からの継続で、話は続編のようだ。
続編の登場は、「夕日の城」(第六話)から「灯」(第七話)に続いて2回目である。
前作は、津神佐保子が、君島二郎を殺害した事を暗示して終わっていたが、捜査本部が解散されて
捜査の手は津神佐保子に及ばなかったのか...
加久隆平と佐保子の関係はすでに冷めていたが、どうやら決定的な別れが待ち構えているようだ。
殺人犯とそれを知っている男の今後は危険な関係である。