研究室_蛇足的研究

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2018年9月21日

清張作品の書き出し300文字前後で独善的研究!


研究作品 No_087

 絢爛たる流離:第二話小町鼓


研究発表=No 087

絢爛たる流離小町鼓
 〔婦人公論:1963年(昭和38年)2月号〕

谷尾妙子の家は明るさを取り戻した。−−−夫殺しの嫌疑で彼女が一年近くも未決に入っている間、この家は妹の淳子夫婦と前からいる女中とで守られていた。「 【絢爛たる流離:小町鼓】蔵書:松本清張全集 2 眼の壁・絢爛たる流離:婦人公論 1963年(昭和38年)2月号

谷尾妙子の家は明るさを取り戻した。−−−夫殺しの嫌疑で彼女が一年近くも未決に入っている間、この家は妹の淳子夫婦と前からいる女中とで守られていた。その間、家の内からはこそとも音がしなかった。以前には道の遠くまで聞こえていた謡や鼓の音が全く絶え消えていた。能の師匠たちも公判中には証人として呼ばれていたので、ついぞ、この家に来ることがない。彼らは厄介な事件の巻添えになったことを後悔しているのかもしれなかった。市兵衛町の坂道を肥った身体で上がってくる観世和聖も、気取った足取りで歩む観世友吉も、それから、とうてい遊び芸の師匠とは思えないほど筋骨逞しい大蔵伍平の姿も、見ることはなかった。もちろん、近所では当初からこの事件の噂でもちきりであった。近所の人たちは、妙子の夫の忠夫が寂しげな姿で付近を徘徊していたのを知っている。

絢爛たる流離の二話。「土俗玩具」に続く「小町鼓」。
「土俗玩具」では、谷尾喜右衛門が最初に登場した。「小町鼓」では、谷尾妙子。
いきなり、
>谷尾妙子の家は明るさを取り戻した。−−−夫殺しの嫌疑で彼女が一年近くも未決に入っている間、
>この家は妹の淳子夫婦と前からいる女中とで守られていた。
妙子は、谷尾喜右衛門の妻なのか? いや違う。すぐ後の記述で夫は忠夫とされている。
>近所の人たちは、妙子の夫の忠夫が寂しげな姿で付近を徘徊していたのを知っている。
谷尾家にまつわる話として展開するのか?第一話の「土偶玩具」を読めば展開が読めそうだ。

最初から登場する人物は多い。
谷尾妙子・妙子の妹の淳子夫婦・女中・観世和聖・観世友吉・大蔵伍平・妙子の夫忠夫