研究室_蛇足的研究

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2018年5月21日

清張作品の書き出し300文字前後で独善的研究!


研究作品 No_084

 【ゼロの焦点


研究発表=No 084

ゼロの焦点
 〔宝石:1958年(昭和33年)1月号〜2月号/1958年(昭和33年)3月号〜1960年(昭和35年)〕


板根禎子は、秋に、すすめる人があって鵜原憲一と結婚した。禎子は二十六歳であった。相手の鵜原は三十六歳だった。年齢の組合せは適切だが、世間的にみると、多少おそい感じがした。「 【ゼロの焦点】蔵書:松本清張全集 3 ゼロの焦点・Dの複合 (太陽(雑誌廃刊で中断)・宝石:1958年(昭和33年)1月号〜2月号/1958年(昭和33年)3月号〜1960年(昭和35年)1月号

板根禎子は、秋に、すすめる人があって鵜原憲一と結婚した。禎子は二十六歳であった。相手の鵜原は三十六歳だった。年齢の組合せは適切だが、世間的にみると、多少おそい感じがした。「三十六まで独身だというと、今まで何かあったんじゃないかねえ」その縁談があったとき、禎子の母は一番、それを気にした。それはあったかもしれない。三十六まではまるっきり女との情事がなかったとは言い切れない。まったくなかったと聞かされたら嘘のようだし、男としてかえってひ弱な感じがする。長い間勤めに出ていて、男の働く世界に身を置いてきた禎子はそう思った。実際、女にまるっきり交渉のない男というのはどこか軽蔑してもいいようなところを持っていた。持っていたというよりも、女が感覚で発見するのかもしれない。そんな男に清潔感というものは、滅多になかった。身体の上でも、仕事の上でも、ある虚弱さを感じるものだ。

                研究

〔「虚線」(太陽1〜2→休刊のため中絶。宝石に再掲載)〕
はじめは、雑誌「太陽」に『虚線』として連載された。
同誌休刊後、『零の焦点』のタイトルで「宝石」に掲載された。
単行本化されたときは、『ゼロの焦点』になるという変遷があった。

書き出しは、当時の社会常識というか、雰囲気を象徴的に表している。
1950年代末(昭和30年代半ばの結婚観が透けて見える。
原作よりも映像の世界が印象深いの『砂の器』同様である。
ただ、『ゼロの焦点』は、女性が主人公で、その後の長編作品の原型とも言えるのだろう。

同時期の作品として
●「【無宿人別帳】第七話『流人騒ぎ』」 (オール讀物:1958年3月)
● 黒地の絵 (新潮:1958年3月〜4月)
が、書かれている。

『ゼロの焦点』は、前回紹介した作品『霧の旗』同様、映画化・TVドラマ化がたくさんされている。
映画
1961年 監督:野村芳太郎  脚本:橋本忍・山田洋次
出演者
鵜原禎子:久我美子
室田佐知子:高千穂ひづる
田沼久子:有馬稲子
鵜原憲一:南原宏治
鵜原宗太郎:西村晃
室田儀作:加藤嘉
本多:穂積隆信

2009年 監督:犬童一心  脚本:中園健司・犬童一心
出演者
鵜原禎子:広末涼子
室田佐知子:中谷美紀
田沼久子:木村多江
鵜原憲一:西島秀俊
鵜原宗太郎:杉本哲太
宗太郎の妻:長野里美
鳴海享:崎本大海
本多良雄:野間口徹
金沢警察署の警部:モロ師岡


※テレビドラマ
  1961年版
フジテレビ系列で8月15日から11月28日まで16回にわたって放送。
キャスト
鵜原禎子:河内桃子
鵜原憲一:小山田宗徳
鳳八千代
河野秋武
村瀬幸子
桜むつ子
武内亨
植村謙二郎
高橋正夫
野沢雅子

  1971年版
3月1日 - 19日にNHKの『銀河ドラマ』(銀河テレビ小説)枠(21:00-21:30)で15回にわたって放送。
ギャラクシー賞第16回期間選奨、第8回ギャラクシー賞(奈良岡朋子)、日本放送作家協会女性演技賞(十朱幸代)受賞。
原作に脚色を加え、ドラマの早い段階で犯人を明らかにした上でストーリーを構成している。
キャスト鵜原禎子:十朱幸代
室田佐知子:奈良岡朋子
田沼久子:長山藍子
鵜原宗太郎:下条正巳
鵜原憲一:江原真二郎
室田儀作:滝沢修
本多良雄:露口茂
宇野重吉

   1976年版
5月31日 - 7月2日に日本テレビ系列の『愛のサスペンス劇場』枠(13:30-13:55)で25回にわたって放送。
キャスト鵜原禎子:土田早苗
室田佐知子:真理明美
田沼久子:女屋美和子
本多良雄:大門正明
鵜原憲一:北村総一郎
下元勉
下条正巳
北城真記子

1983年版
キャスト
鵜原禎子:星野知子
室田佐知子:大谷直子
田沼久子:竹下景子
鵜原宗太郎:河原崎長一郎
宗太郎の妻:三好美智子
本多良雄:潮哲也
青木所長:鶴田忍
唐沢英二
庄司永建
警部:金内喜久夫
バーのママ:初井言榮
禎子の母:風見章子
禎子の妹:安田成美
鵜原憲一:勝野洋


   1991年版
「松本清張作家活動40年記念スペシャル・ゼロの焦点」。
7月9日に日本テレビ系列の『火曜サスペンス劇場』枠(21:03-23:22)で放送。視聴率20.9%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。
脚本の新藤兼人は原作者の指名を受けたもの。犯人が海上に小舟を漕ぎ出すシーンの撮影に関して、新藤は難色を示したが、
原作者の希望により脚本に導入され、撮影が行われた[21]。尚、本作品は収録時季が初夏であった為、
原作小説特有の重苦しい空気感や北陸地方の寒々しい陰鬱な冬の風景などは全く見られず、いささか趣を異にする。
フイルム撮影作品。
キャスト鵜原禎子:眞野あずさ (鵜原憲一と見合い結婚したばかりの新妻。旧姓は板根)
室田佐知子:増田恵子 (室田儀作の後妻)
田沼久子:芦川よしみ (室田煉瓦の受付係)
本多良雄:藤堂新二 (憲一の後任)
鵜原憲一:並木史朗 (禎子の夫。広告会社主任)
鵜原宗太郎:岸部一徳 (憲一の兄)
宗太郎の妻:音無真喜子
西山:平野稔 (検察医)
葉山:金田明夫 (憲一の元同僚)

   1994年版
NHK-BS2で6月1日から4夜連続で放送。
NHK総合テレビでは、1995年2月18日・2月25日に『土曜ドラマ』枠(21:00-22:15)で放送。
キャスト鵜原禎子:斉藤由貴
室田佐知子:萩尾みどり
田沼久子:永島暎子
六助:小西博之
鵜原憲一:三浦賢二
室田儀作:室田日出男