研究室_蛇足的研究

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2017年7月21日

清張作品の書き出し300文字前後で独善的研究!


研究作品 No_079

 【疑惑同名小説アリ


研究発表=No 079

疑惑 〔サンデー毎日臨時増刊 1956年7月号〕

伊田縫之助は、近ごろ妻の瑠美と浜村源兵衛との間に、疑惑を持つようになった。縫之助は添え番衆といって、大奥の雑事方を務める八十石の御家人である。【松本清張全集 36 地方紙を買う女・短編2】より

伊田縫之助は、近ごろ妻の瑠美と浜村源兵衛との間に、疑惑を持つようになった。縫之助は添え番衆といって、大奥の雑事方を務める八十石の御家人である。浜村源兵衛も同役である。二人の間は、役目の上というだけで、さして親しくはない。ただ、家が隣りを二,三軒置くほど近かった。縫之助は源兵衛と親密ではないが、甥の三右衛門も妻の瑠美も、縫之助が伊田家に養子に来る前から源兵衛と親しかった。縫之助はこの家の婿となって、はじめて瑠美と源兵衛とが幼い時から友だちということを知った。それだけでは、縫之助の心に、鳥の胸毛一本ほどの重みにも感じられなかったが、この半年前に源兵衛は妻を喪った。それ以来、彼は屡々縫之助の屋敷に遊びに来るのである。縫之助の屋敷といっても、まだ五十を出たばかりの隠居の三右衛門が、赤ら顔をてかてかさせて達者であった。酒飲みだし、人が来るのを喜ぶ方なのである

                   研究
同名小説アリ:【同姓同名】
いきなり「疑惑」が何であるか書かれている。
近ごろ妻の瑠美と浜村源兵衛との間に、疑惑を持つようになった。

出だしから登場人物が多い。
その関係が少しこんがらがる。

伊田縫之助:伊田家の婿養子
留美:伊田縫之助の妻
縫之助が婿になる前から源兵衛と親しかった。幼なじみ。
浜村源兵衛:伊田縫之助の同胞だが、それほど親しくはない。家が隣りを二,三軒置くほど近かった。
三右衛門:甥、源兵衛の甥?
ここで問題なのが、三右衛門が源兵衛の甥なのか?縫之助の甥なのか....
そのため
、以下の部分が意味不明のように感じる。
>縫之助の屋敷といっても、まだ五十を出たばかりの隠居の三右衛門が、
>赤ら顔をてかてかさせて達者であった。


縫之助の屋敷といっても、...」の後に続くとしたら
たいした屋敷ではない。とか、「屋敷」の佇まいを否定的に表現される事を想像してしまう。

私は、三右衛門が源兵衛の甥であり、伊田縫之助は、伊田三右衛門の養子なったと考えた。
したがって、上記の、「縫之助の屋敷といっても...」は、三右衛門が健在で
とても「縫之助の屋敷とはいえない」と言う意味だと解釈した。
でも、年齢的には源兵衛が.三右衛門の甥でなければおかしい、早とちりだ。
>甥の三右衛門も妻の瑠美も...の書き方は説明不足では...


話の主題は「疑惑」であり、その発展方向が物語の根幹なのだろう。
書き出しだけで、嫉妬深そうな婿養子の伊田縫之助。
源兵衛と伊田縫之助の妻(留美)とは幼なじみ。
源兵衛は半年前に妻を亡くす。
三右衛門は、五十を出たばかりの隠居である。伊田縫之助の妻(留美)は娘

現代版でも「不倫」の舞台装置は整っている感じがする。