研究室_蛇足的研究

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2017年1月21日

清張作品の書き出し300文字前後で独善的研究!


研究作品 No_076

 【憎悪の依頼


研究発表=No 076

【憎悪の依頼】 〔週刊新潮 1957年4月1日〕

私の殺人犯罪の原因は、川倉甚太郎との金銭貸借ということになっている。即ち、私が川倉に貸した金の合計九万円が回収不能のためということになっている。これは私の供述である。 【(株)新潮社:新潮文庫:憎悪の依頼】

私の殺人犯罪の原因は、川倉甚太郎との金銭貸借ということになっている。即ち、私が川倉に貸した金の合計九万円が回収不能のためということになっている。これは私の供述である。警察では捜査課長が念を押し、検察庁では係検事が首を傾けた。「たったそれだけの金でか?」とかれらは訊いた。私は答えた。「あなた方にとっては端た金かも分かりませんが、僕にとっては大金です」無論、私と川倉甚太郎との関係とか生活は、警察によって裏付け捜査されたが、私の自供を覆す何ものも出なかった。私は自供する原因によって起訴され、その原因による犯罪の判決を受けた。私は一審で直ちに服罪した。私は犯行の原因が単純であったせいか、刑量は軽い方である。だが、私は自己の刑量を軽くする企みのために、単純な原因を供述したのではない。実際は、本当のことを云いたくなかったからだ。

                   研究
>私は自供する原因によって起訴され、その原因による犯罪の判決を受けた。
実際は本当のことを云いたくなかった。
量刑に不服があるわけではなく、「本当のこと」が云いたくなかっただけである。
そんな私が一人語りで打ち分け話をする構成のようだ。
動機の問題なのだろうが、本当の動機は知られたくない感情が犯罪者にあるのだろうか?
簡単に言えば、動機は、痴情.怨恨で金が絡み、色が絡みで単純化できそうだが、昨今では理由無き殺人とか、社会的背景を主要な原因に上げる場合もあるが、結局の所「怨み」のような気がする。
「怨み」が醸成され、殺人を実行する経緯が他人をして納得させられるかであろう。
納得されないまでも、同情を禁じ得ない、行為であること必要がある。
ただ、自己満足で完結する場合は、「本当のことを云いたくなかったからだ。」で完結すると思う。
この作品(「憎悪の依頼」)の私は、何が言いたいのだろう。