研究室_蛇足的研究

紹介作品・研究室の倉庫

2011年01月30日

清張作品の書き出し300文字前後で独善的研究!


研究作品 No_049

 【いびき


研究発表=No 049

【いびき】 〔オール讀物〕 1956年10月号

上州無宿の小幡の仙太は賭博の上の争いから過って人を殺して、捕縛された。彼はその日から人知れず異常な恐怖に襲われた。松本清張全集 36 地方紙を買う女・短編2(株)文藝春秋●初版1973/02/20より

上州無宿の小幡の仙太は賭博の上の争いから過って人を殺して、捕縛された。彼はその日から人知れず異常な恐怖に襲われた。仙太は六尺近い大男で、二十八の壮齢である。力も強ければ度胸もある。賭博は渡世であるが、その世界でも顔はよい方である。今更、処刑を恐れる男ではなかった。それにどうせこういう罪は死刑になるようなことはなく、せいぜい遠島くらいと量刑まで知っている。その男が何を恐れたか。鼾である。仙太は人一倍の鼾かきであった。十七,八の時まではそうではなかったが、二十を過ぎてから鼾をかくようになった。それが年齢とともに高くなって、二十四,五の頃になると、壮快な高鼾となった。「どうも兄哥の鼾は少々高すぎるぜ。お陰で昨夜は耳についてこっちは碌に眠れやしねえ」同じ部屋に同宿の者があると、きっと朝になってこういう抗議をうけた。実際、そういう連中は不眠のために眼が赤く血走っていた。

                   研究
1月2日に腸閉塞で緊急入院した。
病室で「松本清張事典」(勉誠出版)を見ながら「いびき」を思い出した。
4人部屋、一人いびきの大きな人がいた。
同室の者が、苦言を呈するほどではなかったが、なかなか寝付けなかった。
旅先でも鼾かきと同部屋になる事は敬遠されがちである。偶然だが身近に体験してしまった。
時代物の中で「いびき」はどんな展開を見せるのだろうか...
寝た後の出来事、自身ではどうする事も出来ない。