研究室_蛇足的研究

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2010年09月19日

清張作品の書き出し300文字前後で独善的研究!


研究作品 No_048

 【市長死す


研究発表=No 048

【市長死す】 〔別冊小説新潮〕 1956年10月号

田山与太郎は九州のある県の小さな市の市長であった。人口十万、北部に海を持った旧い市である。。「遠くからの声」文庫(講談社文庫)(株)講談社●2版1976/12/15より

田山与太郎は九州のある県の小さな市の市長であった。人口十万、北部に海を持った旧い市である。田山市長は六十五歳であった。元陸軍中将という変わった経歴である。しかし今度の戦争には、実戦には出ていない。終戦まで、朝鮮南部の戒厳司令官をしていた。その田山与太郎が二年前に、その市の市長に当選した経緯や、地方政治的な手腕がどうであるかというような事情は、これから述べることには、あまり関係が無い。市長は、陳情のため年に五六回は東京に出張してきた。たいていは市議会議員が三名か四名、一緒についてくるのであった。八月の初めに、田山市長は、港湾問題の陳情でまた上京して来た。このときは港湾委員をしている市議会議員を三名と、秘書一名をつれていた。いつも定宿にしている目黒の蒼海ホテルに六日間滞在して、大体の用件も済んだので、明日は九州に帰任するという前の晩であった。

                   研究
偶然だが、最近再読した「犯罪の回送」も市長の上京、失踪、変死の話でした。北海道北浦市。
こちらは九州のある県、小さな市。
「北部に海を持った旧い市である。」とは、海は日本海(響灘/玄界灘)瀬戸内海(周防灘/豊後水道)
だろう。人口が十万とは地方都市でもかなりの都市である。ちなみに唐津市は人口12万7千人。
場所の問題より市長の経歴が気になる。
市長の名が「田山与太郎」は、清張の命名にしては安易な気がする。
「明日は九州に帰任するという前の晩であった。」前の晩に何かが起きる。