研究室_蛇足的研究

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2010年02月13日

清張作品の書き出し300文字前後で独善的研究!


研究作品 No_045

 【紅刷り江戸噂:第二話


研究発表=No 045

【虎】 〔小説現代〕 1967年4月号〜5月号

甲斐国甲府の町に皐月屋という鯉幟製造の旧い問屋があった。亭主は平兵衛といって、当時五十だが、三代目だった。松本清張全集 24 無宿人別帳・彩色江戸切絵図/紅刷り江戸噂 (株)文藝春秋●1972/10/20/初版より

甲斐国甲府の町に皐月屋という鯉幟製造の旧い問屋があった。亭主は平兵衛といって、当時五十だが、三代目だった。甲府は今では勤番支配となっているが、その前は大和郡山に所替えになった柳沢美濃守吉保が居たり、徳川親藩の城下だったりした。昔は、いうまでもなく武田信玄の本拠であったから、武家風の習慣が盛んであった。また、甲州は甲府のほかにこれといった町も無く、したがって甲府の商売は奥が広かった。皐月屋もかなり手広く販路をもっていた。鯉幟はむろん五月の節句の間だけだが、これを作るのにほとんど一年中かかっている。皐月屋も内職人のほか、町の職人にも仕事を出していた。二月半ばのことである。皐月屋の表に旅姿の一人の若い男が入ってきた。彼は店先の上がり框に両手をついて番頭に云った。「てまえをこちらで雇っていただけませんか」その男は渡職人であった。たいてい店の人手不足のところを見込んで、いきなり雇ってくれと飛びこんでくるのだが、そうした渡り歩きの職人には腕の立つ者が多かった。

                   研究

甲斐国甲府の町に皐月屋という鯉幟製造の問屋。

問屋の亭主は平兵衛。

皐月屋の店先に仕事を頼む渡職人。旅姿の若い男である。

番頭の計らいは如何に...

出だしは甲府の説明と鯉幟(コイノボリ)の製造問屋の説明がすべてである。

いつも感じるのだが、出だしの数行でその場面を、一枚の絵のように描き出している。

その絵からの想像であるが
ここまでの、具体的な登場人物は3名。顔が解るのは番頭と若い男。でも距離がある。

雇ってくれと飛び込んできた、渡職人の男が主人公か?

名前はまだ出てこない。○○の虎?