研究室_蛇足的研究

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2009年12月17日

清張作品の書き出し300文字前後で独善的研究!


研究作品 No_044

 【左の腕


研究発表=No 044

【左の腕】 〔オール讀物〕 1958年6月号

深川西念寺横の料理屋松葉屋に、この一月ほど前から新しい女中が入った。松本清張全集 24 無宿人別帳・彩色江戸切絵図/紅刷り江戸噂 (株)文藝春秋●1972/10/20/初版より

深川西念寺横の料理屋松葉屋に、この一月ほど前から新しい女中が入った。まだ一七だったが、小柄でおさない顔をしている。しかし、苦労しているらしく、することが何でも気が利いていて、よく働く。おあきという名だったが、一二,三人も居るこの家のふるい女中たちからはすぐに可愛がられた。松葉屋は、おあきと同じ日に六十近い老人を下男に雇い入れた。庭の掃除や、客の履物番、風呂焚き、薪割り、近くへの使い走りなどの雑用をさせる。卯助といって、顔に皺が多く、痩せた男である。あまり口かずを利かないが、これも精を出して働く。のっそりとして動作が鈍いのは年齢のせいだろうが、仕事に陰日向がない。おあきと卯助とが同時に松葉やに奉公したのは、二人が親子だからである。実をいうと、卯助は近くの油堀を渡った相川町の庄兵衛店の裏長屋に住んで、それまでは飴細工の荷を担いで売り歩いていた。飴細工は葭の茎の頭に飴をつけ、茎の口から息を吹いて飴をふくらませ、指で鳥の形などをこしらえて子どもに買わせる荷商いである。

                   研究

十七のおあき。六十近い老人「卯助」。
二人は親子。

特に時代の描写はない「庄兵衛店の裏長屋」江戸末期か?

働き者の親子のだが訳あり。特に卯助には過去を感じさせる。

深川西念寺横の料理屋松葉屋

>のっそりとして動作が鈍いのは年齢のせいだろうが、仕事に陰日向がない。
は、その前の表現である
>痩せた男である。あまり口かずを利かないが、これも精を出して働く。
と対比してみると微妙に違う。「のっそり」は卯助の本当の姿なのだろうか?

主役は「おあき」ではない。「卯助」である。