研究室_蛇足的研究

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2008年06月15日

清張作品の書き出し300文字前後で独善的研究!


研究作品 No_039

 【装飾評伝


研究発表=No 039

【装飾評伝】 〔文藝春秋〕 1958年6月号

私が、昭和六年に死んだ名和薛治のことを書きたいと思い立ってから、もう三年越になる。...◎蔵書◎松本清張全集 37 装飾評伝・短編3(株)文藝春秋●1973/02/20/初版より

私が、昭和六年に死んだ名和薛治のことを書きたいと思い立ってから、もう三年越になる。或る人からその生涯のことを聞いて、それは小説になるかもしれないとふと興味を起したのが最初だった。私の小説の発想は、そんな頼りなげい思いつきからはじまることが多い。名和説治は、今の言葉でいえば、「異端の画家」と呼ばれている一人であった。日本の美術の変遷はヨーロッパの様式を次々と追ってきたような具合で、それがいつも主要な傾向になっているが、その流れから少し外れて、個性的な格式を生み出そうとして、自分の場所の一点にじっと立ち止まっている作家を指して異端といっているようだし、それにこの意味には生活的にも多少変わっていたということも含んでいるようである。

研究

NSG(日本清張学会)会員No001のマイケル タンゲマンさんも英訳されているそうなので
「装飾評伝」を取り上げてみました。

実録 小説??
岸田劉生がモデルらしい。清張には「文壇」「画壇」「学閥」「考古学界」など既成の権威を
批判的に扱った小説が結構ある。 岸田劉生なら、そのものズバリ「岸田劉生晩景」がある。

清張は、小説の中でそれとなく自説を挿入したりする。
>私の小説の発想は、そんな頼りなげい思いつきからはじまることが多い。
わたしの小説作法
>”私”を中心とするいわゆる”私小説”でありますが、わたしの場合はそういうやり方をしないで、
>ほとんどフィクション、いわゆる小説本来の物語性を主に生かして書いております。

「装飾評伝」も実録風を装い、「小説本来の物語性を主に生かして」書いているのだろう。

やはり
「異端の画家」名和薛治(ナワセツジ)は偽名らしい、調べたが実在していない

ところで『装飾評伝』ってなんだ!
掲示板でも書きましたが
>四文字熟語でも「装飾評伝」は無いと思います。?
>日本語としても説明のしようがありません。粉飾された伝記?
>日本人は、漢字を表意文字として視覚的に受け止めて意識してしまう(私だけかも)
>だから「装飾評伝」は「装飾評伝」でそのまま理解してしまう(理解したつもり)