研究室_蛇足的研究

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2007年7月15日

清張作品の書き出し300文字前後で独善的研究!


研究作品 No_035

 【贋札つくり


研究発表=No 035

【贋札つくり】1953年12月 〔別冊文藝春秋〕

明治二年の早春の或る夜、福岡藩権大参事小河愛四郎の許へ、もと勘定奉行をつとめ、今は隠居している山本一心がたずねてきた。......◎蔵書◎新装版/増上寺刃傷(講談社文庫)(株)講談社●2003/01/15/初版より

明治二年の早春の或る夜、福岡藩権大参事小河愛四郎の許へ、もと勘定奉行をつとめ、今は隠居している山本一心がたずねてきた。一心は六十に近い老人だが、この頃は誰に会っても藩の財政の困窮していることを心配している。藩では諸経費を節減し、出費を抑えているが、なかなかそのような姑息なことでは藩財政の行詰まりは打開されそうもない。一心が、その夜、小河愛四郎に切り出した話はいつもの愚痴ではなく、重大な進言だった。彼はこういうことを云った。福岡藩は維新前後の難儀つづきで多額の出費が重なった上、更に奥羽出兵で莫大な費用を要した。それに、新政府が新しく発行した金札の信用を保つため、石高貸付と称して万石について二千両の正金を金札と引替えに差出せといって来て居り、その調達に難渋している。こういうようなことが重なって、近頃は藩の財はいよいよ枯渇した。ところが、財政で苦しんでいるのは当藩ばかりでなく、他藩も同じである。

研究

題名からして、藩財政の窮地を「贋札つくり」で凌ごうという話なのか?
幕末から新政府が樹立され廃藩置県前の福岡藩の財政窮乏は、
現代社会の政府の財政再建と通じて興味を引く。

>六十に近い老人

の山本一心が

>小河愛四郎に切り出した話はいつもの愚痴ではなく、重大な進言だった。

これは、題名からして、「贋札つくり」意外に考えられない。
福岡藩の「官僚」は苦肉の策を講じる。失敗するであろう「贋札つくり」の結末は、清張らしい
結末になるのか?


※【廃藩置県】
廃藩置県(はいはんちけん)は、明治維新期の明治4714日(1871829日)に、
明治政府がそれまでの藩を廃止して、地方統治を中央管下の府と県に一元化した行政改革である。
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