研究室_蛇足的研究

紹介作品・研究室の倉庫

2003年03月31日

清張の作品の書き出し300文字前後で独善的研究!。


研究作品 No_013

 【情死傍観


紹介No 013

【情死傍観】1954年 「小説公園」

以前、私はある雑誌に『傍観』と題した二十枚にも足らぬ小品を発表したことがある。......◎蔵書◎松本清張全集 35 或る「小倉日記」伝・短編1●1972年2月20日(初版)より

以前、私はある雑誌に『傍観』と題した二十枚にも足らぬ小品を発表したことがある。阿蘇山の噴火口に投身する自殺者を救う老人のことを小説にしたものだった。この老人は実在の人物で、私が阿蘇の内ノ牧温泉に二,三日遊んだ時、その老人に遭って話をきいた。老人は永年、阿蘇の噴火口の登り口のところで茶店を開いていたが、今まで飛び込み自殺を救った数は百人を下らぬと云う。現に私に、人命救助の知事の表彰状を一束にして見せてくれた。この他、自殺の目的で登山してくる者を、途中で発見して無事に説得して下山させた数を入れたら何百人であろうという。自殺に来る者の様子は、慣れた者には大てい見ていて分かるらしい。大岡昇平氏の「来宮心中」の中にもそんなことが書いてある。自殺や心中の多い土地には、どこにもそんな人間がいるとみえる。

研究

私は清張なのだろうか?老人の話は本当なのだろうか。おそらく取材の話であろう。清張の作品には、自殺や心中などよく登場する。「『傍観』と題した二十枚にも足らぬ小品を発表したことがある。」とあるが、これは導入の為のフイクションなのだろうか。投身自殺の「名所」?阿蘇が舞台である。この話は老人の話が中心になって進むのだろう。大岡昇平氏の「来宮心中」は何か伏線にでもなるのだろうか。 タイトルがズバリ内容を表しているようだ。