研究室_蛇足的研究

紹介作品・研究室の倉庫

2001年10月07日

清張の作品の書き出し300文字前後で独善的研究!。


研究作品 No_006

 【たづたづし


紹介No 006

【たづたづし】1963年 「新潮社」

夕闇は路たづたづし月待ちて行かせわが背子その間にも見む。......◎蔵書◎「目の気流」新潮文庫1976年10月30日(6版)より

夕闇は路たづたづし月待ちて行かせわが背子その間にも見む(七〇九)この歌は奇妙にわたしの頭に印象を刻んでいる。別に万葉集や和歌に興味があるのではない。たまたま本屋に寄って万葉集の本を開いたとき、偶然、この歌が眼にふれて頭に残ったのだ。そのときも、どのような心理で本棚に並べてある万葉集を手に取ったかよく分からない。それも東京ではなく、信州諏訪の本屋だった。妙な土地で見たものだ。この歌の意は、「月が出るまでの暗がりの路は、たどたどしくてわかりにくいものです。あなた、どうか月が出るまで待って、その上でお出かけ下さい。その間にもあなたのお側にいとうございます」というのであろう。なぜ、こんな歌がそのとき、わたしの頭に沁みこんだのだろうか。   

研究

万葉集の中の一首である。一読しただけではこの歌の意味はわからない。主人公は「万葉集や和歌に興味があるのではない」となっているが、なぜ、主人公の頭に沁みこんだのか?歌の意味は「私」の解説によって解る。俗っぽく言えば女の未練がかなり色っぽく歌われ、深い情けが感じられる。今後の展開に重要な意味を持つのであろう。男女の憎愛がこれからの展開の中心になるであろう象徴として使われている。信州諏訪の本屋。場所は明快である。当然信州はこの小説の舞台であるはずだ。