紹介作品No 111
【ペルシアの測天儀】 〔【小説新潮】1967年(昭和42年)8月号〕
おもちゃの測天儀は、常習の窃盗犯によって、沢田武雄の運命を翻弄する。
金属製品会社の課長、沢田武雄の家に泥棒が入った。
盗られたものは現金5万円程度と、ダイヤ入りの白金の指輪、翡翠の帯留め、スイス製の腕時計。
被害から二週間後、所轄の警察から呼び出しがあった。
犯人が捕まったというのである。前科三犯窃盗の常習犯だった。二十一歳になる男。
金は使ったが、品物は処分せずに持っていたので返却されることになった。
刑事は円いメダルのような物を見せた。
>「あ、それもわたしのものです」
アテネの空港で買ったお土産で、ペルシアの測天儀だった。もちろん模造品で、おもちゃのようなものだった。
刑事に、被害届のリストに載っていないことを咎められた。
そして、その測天儀に小さな疵があることを教えられる。沢田武雄にも覚えがなかった。
沢田夫婦の間でも、なぜ犯人があまり価値があるとも言えない「測天儀」を持って行ったのか話題になった。
沢田の妻は、もともと「測天儀」に全く興味を示さなかった。
それから二年、沢田武雄に愛人が出来た。 銀座のキャバレー
ホステス 高林路子
26歳 結婚の経験がある。、白で体格がよい、男好きの顔
マンションに囲う
沢田は彼女に注ぎ込む
測天儀を彼女に見せると眼を輝かせた。妻との違いを感じる沢田だった
測天儀をペンダントにするという
しかし、一週間もすると彼女の首からペンダントは外れた
話の筋立ては単純で、取り立てて書くほどのことはない。清張人身も作品中でことわっている。
金属製品の会社の課長、それなりに高給を取っている。
妻との間は不仲と言うほどではないが、倦怠期とでも言うのかしっくりしていない。
課長に女が出来た。そのきっかけもごくありふれたものだった。女をマンションに囲う。
やがて二人の中も醒めていく。女に男が出来る。
男(課長)の憎悪は女に向かう。憎悪は殺意へと増幅される。
女を殺した男(課長)は、現場(女の部屋)に残したペルシアの測天儀を持ち帰る。二人の中は誰も知るものがいなかった。
ペルシアの測天儀を持ち帰ったのは、二人の関係を知られる証拠隠滅のためでもあった。
この指示立てに絡むのが常習の窃盗犯である。
課長の沢田武雄宅に窃盗に入り、後に捕まった。なぜか、その時ペルシアの測天儀に興味を持った。
この窃盗犯は、後に沢田武雄の女のマンションに盗みに入った。そこで、測天儀を見た。
清張は、女ができた経緯や女に殺意を抱いた経緯を.ありふれた話しとして詳しく書いていない。
なるほど、筋立てにその経緯の意味は無い。
間抜けでお人好しの若い窃盗常習犯こそ主人公と言える。
外国での土産品で革製品、ガラス細工、貴金属の土産品など何でもよいのでは。
そう言えば、伊勢根付をテレビで見た。これなど、うってつけでは、日本製でもかまわない。
タイトルは、測天儀だが、「伊勢根付」でもよい気がする。
【伊勢根付】
ひょんなきっかけから、窃盗犯が「ペルシアの測天儀」を刑事に話す。
刑事への告白で事件は急展開
二つの窃盗事件は「ペルシアの測天儀」をはさんでつながる。
問題なのは、その一方の事件現場は、殺人事件の現場なのだ。
●読後感としては少々物足りない。
2021年01月21日 記
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登場人物
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沢田 武雄 |
金属製品会社の課長。自宅に窃盗犯、アテネ空港の土産の測天儀が盗まれる。測天儀の行方が、彼の運命を変える。バーのホステスの女が出来る。 |
窃盗常習犯 |
間抜けでお人好しの若い窃盗常習犯。21歳。 |
高林 路子 |
ホステス。沢田武雄の愛人。 26歳 結婚の経験がある。色白で体格がよい、男好きの顔。マンションの自宅に窃盗犯が侵入。 |
刑事 |
窃盗常習犯の告白を受けて、沢田武雄の殺人事件を解決に向かわせる。 |
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