紹介No 038
【薄化粧の男】1961年3月 〔婦人公論〕1961年3月号
昔録画した清張原作のテレビドラマを意識的に見ている。「渡された場面」「喪失の儀礼」「強き蟻」
そして「薄化粧の男」。録画しただけで見るのは初めてである。
共犯者が不仲を演出し、最後に犯人として登場する結末である。
共犯者が、互いに相手を犯人呼ばわりすることで自己保身をはかり
お互いのアリバイを証明する。隣人という他人を客観的証人へと仕立て上げる。(一年半待て)
「喪失の儀礼」の嫁と姑。そして「薄化粧の男」の本妻と妾(愛人)である。
テレビドラマは”いかにも”と言った感じの不仲の演出が気になり、小説と映像(ドラマ)の違いが
際だった感じでした。
小説「薄化粧の男」は、とにかく登場人物が少ない。
フルネームで登場するのは三人だけである。名字だけの人物もいない。
タイトルからの想像とは違った。
>若いときの美男子が年を取って衰えたときほど哀れなものはない。
>かつての美貌には皺が波立ち、皮膚がたるみ、衰弱が到るところに顕れている。
>ところが、草村卓三自身は、まだ自己の美貌に自信をもっていた。これは滑稽な話話だが、
>頭髪を黒く染めただけではなく、彼は淡い色の着いた眼鏡を掛け、ときには己れの顔に
>薄化粧を施したりした。
草村卓三は、吝嗇で、「鼻持ちならない男」であった。
そんな、草村卓三にも愛人がいた。風松ユリである。
卓三はユリを椎名町へ囲う。卓三の妻淳子は、たびたび愛人のユリ宅へ押しかける。
女二人の修羅場が始まる。勿論近所の主婦など目撃者多数。
この二人、本妻淳子と愛人ユリが共謀して卓三を殺害するのだ。
二人はそれぞれの新しい生活が始まる。
風松ユリの自殺を聞いた、草村淳子の不安。
自殺の原因を「殺人の呵責」と考える草村淳子の行動は、墓穴を掘ることになる。
この小説では、殺人の計画性、そのトリックなどたいした問題ではない。と思う。
薄化粧をする男の心理。共謀する本妻と愛人。なぜ事件が発覚するのか
共犯者は常に心理的脅迫者として存在する。(共犯者)
※発見
化粧する男 田村光男著(光陽出版社)
人材派遣会社に登録する息子の身代わりに勤務。60をすぎた男は慣れない手つきで化粧を...
2008年05月23日 記 |
登場人物
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草村 卓三 |
吝嗇で、「鼻持ちならない男」。小田護謨株式会社、庶務課長。 |
草村 淳子 |
草村卓三の妻。夫の愛人(ユリ)と共謀して、夫を殺す。 |
風松 ユリ |
草村卓三の愛人。元は銀座のキャバレーの女給 |
牛乳配達人 |
十七歳の少年 |
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