紹介No 009
【告訴せず】1965年 「週刊朝日」
選挙資金を持ち逃げする男の話である。
容貌の程度も平均以下で、風采も上がらない四十半ばの男、木谷省吾は、
彼の人生で最初で最後の事件を起こす。
持ち逃げする金は選挙資金といっても表に出せる金ではない。
清張ならでなの目の付け所である。
小豆相場で一儲けする木谷は、潜伏先の旅館で懇ろになったお篠と新生活の
夢を見るようになる。
しかし、彼の身辺には選挙資金を持ち逃げされた大井芳太の手が迫っている。
小豆相場の仲買店「平仙物産株式会社」の社員小柳、そこで知り合った大場老人、その息子。
一見、大井芳太とは全く関係ないところから木谷は追いつめられてゆいく。
それは、お篠の裏切りで決定的になる。
選挙資金の持ち逃げという一般人には、痛快な出来事、言ってみれば「ざま〜みろ」的な
気分で木谷を応援し、その出世(儲け話)に溜飲を下げるが、清張はそれで終わらせない。
甘くないのである。
木谷の破滅が結末である。破滅のキーワードは、『間歇性記憶喪失症』である。
清張創造の「間歇性記憶喪失症」は、こんな病気もあるのかと思わせる。
長編である。登場人物も多彩で確か映画化されたのでは?
2002年08月04日 記
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登場人物
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木谷 省吾 |
主人公。ありふれすぎていて魅力を感じさせない男。選挙資金を持ち逃げする。 |
お篠 |
木谷の愛人。木谷を裏切る |
小柳 |
仲買店「平仙物産株式会社」の社員。木谷の担当。やはり木谷を裏切る |
大井 芳太 |
木谷に選挙資金を持ち逃げされる保守党代議士 |
大場 平太郎 |
大場老人.として登場。「仲買店」で木谷と知り合う。保守党の旧い院外団的な残党 |
大場 平助 |
大場平太郎の息子。お篠と組んで木谷の金をせしめる。 |
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