紹介No 004
【賞】1957年 「新潮」
私と言う狂言回しの口で語られる「粕谷侃陸」は、誰かモデルでもいるのだろうか。
私と、粕谷侃陸の関わり合いが突然で都合が良すぎる感がある。
若き粕谷侃陸が得た「賞」は、彼の人生を変えてしまう。
本来なら、揚々たる将来が開け、その方面でチョットした存在として権威にでもなれたのであろう。
しかし、時として、若くして得た「賞」は重荷になり、重荷は彼を潰してしまう。
文学賞にも「芥川賞」「直木賞」など、イロイロあるが若くして一発屋的に賞を射止め、
将来を嘱望されながら次なる作品が書けず、そのまま終わる人もいる。
「賞」に頼った生活をする粕谷侃陸は、多少ともその権威の威力を保てる地方都市で
詐欺的行為によって生活の糧を得る。
しかし、その詐欺的行為は、いかにもだまされる方が悪いとでも言いたげな粕谷侃陸の
態度によって「賞」の権威をあざ笑っている。
権威であるはずの「賞」は、その後の彼にとっては復讐の対象なのか。
『ふと粕谷侃陸の大きな「学士院賞受賞」の名刺を思い出した。
しかし、一体、賞の実体とは何であろうか?彼は「賞」へ復讐しているように思えた。』
2001年04月07日 記
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登場人物
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私 |
狂言回し |
粕谷 侃陸. |
学者?・カスヤカンロク |
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