松本清張_石の骨

題名 石の骨
読み イシノホネ
原題/改題/副題/備考     
本の題名 松本清張全集 35 或る「小倉日記」伝・短編1【蔵書No0106】
出版社 (株)文藝春秋
本のサイズ A5(普通) 
初版&購入版.年月日 1972/2/20●初版
価格 880
発表雑誌/発表場所 「別冊文藝春秋」48号
作品発表 年月日 1955年(昭和30年)10月号
コードNo 19551000-00000000
書き出し 「故宇津木欽造先生記念碑除幕式」は、三時からL大で開かれた。己は行ったものかどうかと暫く迷ったが、行くことにした。そこからどこか静かなホテルに廻って、今度出版する予定の『日本に於ける旧石器時代の研究』の校正刷に手を入れるつもりになった。三時前十分にL大学正門前についた。構内に入るとすぐ受附があった。白いテント張りが向こうに見えていた。受附に備えた芳名帳に署名すると、それを見ていた係が、「黒沢先生、黒沢先生。これをどうぞ」といって菊の小さな徽章をさし出した。中に入ると、多勢のあいだから白髪をきれいに分けた老人が笑いながら近づいてきた。今日の除幕式の委員長である水田嘉幸博士であった。「やあ、よく来てくれました」七十五歳の学会の元老は云ってくれる。己は鄭重なお辞儀をした。周囲の者が我々を振り返った。その眼に何か冷たい色がありそうな気がして、己は肩を聳やかす姿勢になった。思わず出る癖である。
作品分類 小説(短編) 19P×1000=19000
検索キーワード