松本清張_北の詩人

題名 北の詩人
読み キタノシジン
原題/改題/副題/備考  
本の題名 松本清張全集 17 北の詩人・象徴の設計【蔵書No0098】
出版社 (株)文藝春秋
本のサイズ A5(普通)
初版&購入版.年月日 1974/01/20●初版
価格 880
発表雑誌/発表場所 「中央公論」
作品発表 年月日 1962年(昭和37年)1月号〜1963年(昭和38年)3月号
書き出し 一九四五年の十月、林和はパゴダ広場を過っていた。ソウル(京城)の屋根の上に湖のような空がひろがり、空気が冷たく乾燥していた。地面に砂が舞っている日だった。今日は身体の調子が少し悪い、と林和は歩きながら思った。長い間病気を持っていると、その日の加減で黴菌の機嫌がだいたいわかる。身体が熱く、眼の奥が潤んでいた。ソウルから日本の軍隊が引き揚げて間もなかったが、降伏と決まったのちに築かれたバリケードが。雨ざらしの残骸を見せていた。公園はいろいろな集会に忙しく使われているが、今日は珍しくデモもなかった。パゴダの前に陽を浴びて、悠然と腰をおろしている人間が多かった。通行者の中にもまだ日本人が混じっている。横の通りにあるヤミ市場から騒ぎが聞こえていた。林和は誰かに声をかけられたと思ったが、二度目に、はっきりと自分の名を呼ばれた。
作品分類 小説(長編) 185P×1000=185000
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