松本清張_死の発送(別題)
(原題=渇いた配色)

題名 死の発送
読み シノハッソウ
原題/改題/副題/備考 (原題=渇いた配色)
本の題名 死の発送【蔵書No0063】
出版社 (株)角川書店
本のサイズ 新書(KADOKAWANOVELS)
初版&購入版.年月日 1982/11/25●初版
価格 640
発表雑誌/発表場所 「週刊公論」・「小説中央公論」昭和37年初夏特大号
作品発表 年月日 1961年(昭和36年)4月10日号〜8月21日号・1962年(昭和37年)初夏特大号、10月号、12月号
コードNo 19610410-19621200
書き出し 岡瀬正平が七年の刑を終えて出所した。世間は彼の名前をまだ忘れていなかった。彼はかつてN省の官吏であった。公金五億円を費消し、当時、国会の問題になったくらい社会を騒がせたものだった。そのころ二十五歳だった岡瀬正平も、釈放されて出て来たときは三十二歳になっていた。まだ風の寒い早春である。岡瀬正平は、刑務所の門前まで迎えに来た叔父の岡瀬栄次郎に伴われ、都内中野区新井薬師の近くにあるその自宅に落ちついた。叔父は雑貨商であった。数社の新聞記者が岡瀬宅に押しかけていった。なにしろ、弱冠二十五歳で当時の金で五億円使い込んだのだから、岡瀬正平というと、七年経った今でも、十分にニュース価値があった。岡瀬正平は笑顔で新聞記者団と会った。当時はまだ童顔だった彼も、今はさすがに顔が瘠せ、顎が尖り、老けて見えた。「あなたの今の心境はどうですか?」新聞記者は訊いた。「大へん申しわけないと思っています」岡瀬正平は頭を下げた。
作品分類 小説(長編) 229P×720=164880
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