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松本清張_薄化粧の男 影の車(第三話) 

(株)文藝春秋=松本清張全集11971/04/20):【影の車】第五話〕

No_1038

題名 影の車 第三話 薄化粧の男
読み カゲノクルマ ダイ03ワ ウスゲショウノオトコ
原題/改題/副題/備考 【重複】〔(株)新潮社=(駅路) 傑作集短編(六)〕
●シリーズ名=影の車
●全8話
1.
確証〔(株)文藝春秋=松本清張全集1〕
  
確証〔(株)新潮社=黒地の絵 傑作短編集二〕
2.
万葉翡翠〔(株)文藝春秋=松本清張全集1〕
  
万葉翡翠〔(株)新潮社=駅路 傑作短編集六〕
3.薄化粧の男〔(株)文藝春秋=松本清張全集1〕
  
薄化粧の男〔(株)新潮社=駅路 傑作短編集六〕
4.
潜在光景〔(株)文藝春秋=松本清張全集1〕
  
潜在光景〔(株)新潮社=共犯者〕
  
潜在光景〔(株)角川書店=潜在光景〕
5.
典雅な姉弟〔(株)文藝春秋=松本清張全集1〕
  
典雅な姉弟〔(株)新潮社=共犯者〕
6.
田舎医師〔(株)文藝春秋=松本清張全集1〕
  
田舎医師〔(株)新潮社=宮部みゆき選〕
7.
鉢植えを買う女〔(株)文藝春秋=松本清張全集1〕
  
鉢植えを買う女〔(株)角川書店=潜在光景〕
8.
突風〔中央公論新社:文庫(中公文庫)〕
●全集(7話)
1.
潜在光景
2.
典雅な姉弟
3.
万葉翡翠
4.
鉢植えを買う女
5.薄化粧の男
6.確証
7.
田舎医師




※「
突風」が未収録
本の題名 松本清張全集 1 点と線・時間の習俗【蔵書No0022】 映像の世界【TV】  
出版社 (株)文藝春秋
本のサイズ A5(普通)
初版&購入版.年月日 1971/04/20●初版
価格 800
発表雑誌/発表場所 「婦人公論」
作品発表 年月日 1961年(昭和36年)3月号
コードNo 19610300-00000000
書き出し 三月三日の午前五時半ごろだった。夜明けの光が雑木林の向うに蒼白く射している。あたりはまだうす暗かった。朝靄が林の裾や遠い家なみ屋根の上に立っている。畠も、道も、白い霜が降りていた。郊外なので、まだ住宅地よりも田圃が多い。牛乳配達人が自転車に乗って、その道を走っていた。ハンドルに掛けた袋の中で、詰った牛乳壜が微かに鳴っている。配達人は一軒ずつ壜を置いていった。その住宅地を離れると、次の町に移るまでは両側が広い田圃になっていた。まだ藁屋根の百姓家が残っていて、霜はその上にも雪のように載っていた。歩いている人はいなかった。鳥が鳴いていた。牛乳配達人は、十七歳の少年だった。田圃道に降りた霜に自転車のタイヤを転がしていると、前方に小型自動車が一台止まっているのが眼についた。
あらすじ感想 ●発表当時は、シリーズ作品【影の車】第三話だったが、全集収録は第五話で収録。


昔録画した清張原作のテレビドラマを意識的に見ている。「渡された場面」「喪失の儀礼」「強き蟻」
そして「薄化粧の男」。録画しただけで見るのは初めてである。

共犯者が不仲を演出し、最後に犯人として登場する結末である。
共犯者が、互いに相手を犯人呼ばわりすることで自己保身をはかり
お互いのアリバイを証明する。隣人という他人を客観的証人へと仕立て上げる。
一年半待て

喪失の儀礼」の嫁と姑。そして「薄化粧の男」の本妻と妾(愛人)である。
テレビドラマは”いかにも”と言った感じの不仲の演出が気になり、小説と映像(ドラマ)の違いが
際だった感じでした。

小説「薄化粧の男」は、とにかく登場人物が少ない。
フルネームで登場するのは三人だけである。名字だけの人物もいない。

タイトルからの想像とは違った。
>若いときの美男子が年を取って衰えたときほど哀れなものはない。
>かつての美貌には皺が波立ち、皮膚がたるみ、衰弱が到るところに顕れている。
>ところが、草村卓三自身は、まだ自己の美貌に自信をもっていた。これは滑稽な話話だが、
>頭髪を黒く染めただけではなく、彼は淡い色の着いた眼鏡を掛け、ときには己れの顔に
>薄化粧を施したりした。

草村卓三は、吝嗇で、「鼻持ちならない男」であった。
そんな、草村卓三にも愛人がいた。風松ユリである。
卓三はユリを椎名町へ囲う。卓三の妻淳子は、たびたび愛人のユリ宅へ押しかける。
女二人の修羅場が始まる。勿論近所の主婦など目撃者多数。

この二人、本妻淳子と愛人ユリが共謀して卓三を殺害するのだ。
二人はそれぞれの新しい生活が始まる。
風松ユリの自殺を聞いた、草村淳子の不安。
自殺の原因を「殺人の呵責」と考える草村淳子の行動は、墓穴を掘ることになる。

この小説では、殺人の計画性、そのトリックなどたいした問題ではない。と思う。

薄化粧をする男の心理。共謀する本妻と愛人。なぜ事件が発覚するのか
共犯者は常に心理的脅迫者として存在する。
共犯者


※発見
化粧する男 田村光男著(光陽出版社)
人材派遣会社に登録する息子の身代わりに勤務。60をすぎた男は慣れない手つきで化粧を...


2008年05月23日 記
作品分類 小説(短編/シリーズ) 23P×1000=23000
検索キーワード 愛人・共謀・牛乳配達・練馬区高松町・椎名町・ゲイボーイ・ルノー・吝嗇・本妻・妾
登場人物
草村 卓三 吝嗇で、「鼻持ちならない男」。小田護謨株式会社、庶務課長。
草村 淳子 草村卓三の妻。夫の愛人(ユリ)と共謀して、夫を殺す。
風松 ユリ 草村卓三の愛人。元は銀座のキャバレーの女給
牛乳配達人 十七歳の少年

薄化粧の男