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松本清張_ひとり旅

No_0003

題名 ひとり旅
読み ヒトリタビ
原題/改題/副題/備考 【重複】〔(株)角川書店=延命の負債 (角川文庫)〕 
本の題名 延命の負債【蔵書No0017】
出版社 (株)角川書店
本のサイズ 文庫(角川文庫)
初版&購入版.年月日 1987/06/25●初版
価格 380
発表雑誌/発表場所 「別冊文藝春秋」
作品発表 年月日 1954年(昭和29年)7月号
コードNo 19540700-00000000
書き出し 田部正一は早くから、遠い旅をしたいと思い、一種の憧れをもっていたが、貧乏でそんな余裕がなかった。出来ないと分かっていたから、憧れていたのだろう。小学校の時は地理が好きであった。何県の何町の人口はいくらで、産物はこれこれ、というような教科書の普通無味乾燥な文句も、その遠い、見も知らぬ町の風景や土地の生活まで空想できて楽しかった。九州に生まれ、そこから一歩も出たことのない少年の頃の田部は、地図の上に、例えば、五城目、鹿渡、能代などという東北の地名を見ると、寒風に吹きさらされた陰鬱な町なみや、北の涯につづく荒涼とした道など眼に泛び、その道をとぼとぼ歩いている自分の姿を想像して、うら淋しい思慕の情さえ起した。
あらすじ感想 田部が旅先でみる男女は....

やがて彼は、旅先で彼のそれと同じ眼で女と共に居るところを見られる。

たとえば、電車の中で楽しそうな男女を見る。

しかし、その男女はほんとうに楽しいのだろうか?

その男女を見た眼は、当事者になったとき、初めてその眼を意識する。

楽しそう、幸せそう、それは当人たちの問題と無関係に見る者の眼で決めてしまう。

そのことに気がつくのは容易ではない。

やがて、旅先の涯は女との死が待っている。田部は、初めて気がつく。

女と旅をする田部を見る男の眼は、かつて田部が旅先で男女を見た眼のそれである。

短編で、極めて日常的な状況に潜む狂気をさりげなく書いている。

この狂気も日常なのである。


2001年03月01日 記
作品分類 小説(短編) 18P×600=10800
検索キーワード 旅・九州・男女・死
登場人物
田部 正一 今で言えば営業マンか
遠藤 ユキ 田部正一の女、夫と別居中
杉岡 田部正一の雇い主

ひとり旅